夢の扉

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夢の扉

 夢の扉が開かれギュッタは暗い通路を進み、先に見える灯りを目指した。 カウンターが現れ、キャンドルの火に照らされ綺麗な女性が微笑んでいる。 周りを見渡すと窓がない、地下室の様だ。 中は薄暗く、蜜蝋パブより随分広い。 ギュッタは不安になり、後ろを振り向いたが扉は消えていた。 「出られない?」 カウンターの女性 「大丈夫よ、呪文を唱えたら扉は現れるわ、『オープンセサミ』よ」 ギュッタ 「有り難うございます。 あの…」 カウンターの女性 「ギルドの登録手続きで宜しいかしら?」 ギュッタ 「はい!」 カウンターの女性 「私は蜜蝋ギルド主催者のマリアよ、宜しく」 ギュッタ 「マリアさん。 俺ギュッタです、こちらこそ宜しく」 マリア 「蜜蝋ギルドの説明をするわね」 マリアの説明 主催者 マリア・ハニーテスト 登録料 15歳以上 50ギル(1年更新)     ※ エール(一般的なアルコール)1杯3ギル(300円〜350円くらい)     15歳未満 無料 クエスト 依頼者は個人・法人(王族、通商ギルド、軍関係者など)      大型クエスト・メンバースカウト、マッチング      初級魔導所の貸し出しあり。(1週間無料それ以降1週間1ギル) その他 火鉢とお茶無料サービス マリア 「以上よ、いいかしら?」 ギュッタ 「はい!」 マリア 「ご署名と、ご住所の記入して下さる?」 ギュッタ 「名前は書けますが。住所が…」 マリア 「宿屋さんでもいいのよ、え? お金がなくてお宿も取れない…分かったわ、ちょっと待って」 マリアは手元にあった紙に何やら走り書きした。 ぽんぽんと手を叩くと、ほの暗い部屋の隅から小鬼が現れた。 小鬼 「へいよ、ごしゅじんごようは?」 マリア 「狼亭のウルヴァンに、このメモの返事もらって来て!」 小鬼は頷き、仄暗いギルドの隅に消えて行った。 マリア 「少し待っていて。暫くギルド見学でもしてちょうだい、お勉強になるわ」 ギュッタ 「はい」 ギュッタはギルド見学を始めた。  カウンターの左の壁側に初級の魔導教本と、解説リーフレットが置かれていた。 リーフレット入れには『ご自由にお取り下さい』と、書かれている。 ギュッタ 「これ。魔導文字の読み方だ…1枚頂こう。」 ギュッタはクラノス語の読み書きできたが、魔導書の文字は殆ど読めない。 ギュッタ (これじゃ…クエストメンバーにもなれない) 夢の扉を開けるためにギルドに来たが、手続き進まない、魔法使えない。 「俺の夢は開かずの扉だな」 ギュッタは、ギルドの奥に足を運んだ。 室内至る所に椅子や机が並べられている。 冬なので地下室でも肌寒い、殆どのギルド会員は火鉢を借り、談話していた。 もっぱらフロリバンダという王国の話だ。 ギュッタ 「こんなに薄暗いのに顔を隠した奴ばかりじゃないか」 奥から話し声が聞こえる。 覆面・旅人風の男 「北の脅威・ザイオン共和国連邦が遂にフロリバンダも、ノーザン・パクト(北の機構)に加盟させた様です」 フード・マントの男 「あれは加盟ではない、明らかな侵略行為だ」 覆面・旅人風の男 「フロリバンダは、侵略した他の国々よりも我国と大きく国境を接して、厄介ですね。」 よく見るとマントの下はクラノス軍の軍服、この男は軍人の様だ。 凄い話をしている、ギュッタは驚いた。 ザイオン理想主義共和国はこのメディコリス大陸最北端で、クラノス王国に次ぐ大国である。 フロリバンダ王国連邦は去年の秋、国王戴冠式の日にクーデターが起き、同時にザイオンに侵攻されたのだ。 ギュッタは、村で大人たちがよくこの話をしていたので、大体は理解していた。 話していた2人はギュッタに気づき、口を噤んだ。 ギュッタは申し訳なく思いその場を立ち去った。 別の方向から話し声がする。 マフラーで顔を隠した男 「ああ、また難民だ。幾ら取り締まってもプリエト城下町に不法流入しやがる、治安が乱れるぜ!」 娼館の女将? (顔は出しているが厚化粧) 「本当に、ヴォレイオスのお山の巡礼者の数が減って、宿屋の旦那連中の皺いこと、この上なしだわ」 娼館の女将の女は手元の火鉢の火を借りて細いパイプの煙草を吹かせていた。 「でもねぇ、フロリバンダの難民には上玉娘がてんこ盛りだよ、軍人さんは何時になく羽振りは良いしね〜ウッフッフ…」 マフラーで顔を隠した男 「女将、凄い玉仕入れましたぜ! フロリバンダの貴族の娘だぜ、あんたの依頼通りだ、高く買っておくれだぞ」 ギュッタは話が余りにグロテスクでその場を離れた。 下手をすれば自分の妹も、この連中の餌食だった。 ギュッタ 「田舎の畑で暮らすのとは大違いだ。ここには世の中の最新情報が泉の様に溢れている、魔道士のことも詳しくわかるかも!」 ギュッタはフロリバンダの難民や、ヴォレイオス山巡礼者のことまで考えたことがなかった。 カウンターから声がする。
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