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翌日となり、急過ぎる引っ越し時刻を間近に控えていた。
―――・・・もう15時か。
今日の夕方には飛行機でアメリカへ行くため空港へと向かう。 退院直後となるが、モタモタしていられる時間はなかった。
―――もう人工呼吸器は外すことができて、お父さんとお母さんの目も緩くなった。
―――そんなお父さんたちの目を盗んで流二の家に電話をしてみたけど、駄目だった。
―――・・・今は学校に行っているって。
―――そりゃあそうだよね。
―――完全に謝るタイミングを逃しちゃったな・・・。
時計へと視線を向ける。
―――そろそろ家を出るって言われそう。
両親は現在急いで旅立つ支度をしている。 海成はすることがなくのんびりと部屋の中でくつろいでいた。
―――このまま僕は日本を旅立ってもいいの?
―――・・・いや、やっぱり僕はこのまま流二と離れたくない。
―――もし日本へ戻ってきたとしても、最悪な関係のまま再会することになる。
―――そしたらもう、関係は修復不可能なのかもしれない。
そう思い両親宛てに書き置きを残し出かけることにした。
『流二のところへ行ってくる。 すぐに戻るから』
書いたメモを自室に置き窓から出る。
―――靴・・・。
―――玄関から出られないし、裸足でもいいか。
時間もないため少し走って流二の家へと向かった。
―――また心臓に負担がかかるのかもしれない。
―――でもきっと、心臓に負担をかけるのは今が最後だと思うから。
―――どうか、耐えて・・・ッ!
裸足のため地面が痛く上手く走れない。 そのためスピードがあまり出なかったことが救いだった。
―――そう言えば、流二の家までの道のりに近道があったような・・・?
近道を思い出し流二の家を目指す。
―――もう流石に帰ってきているはずだよね。
流二の家へと着き、躊躇うことなくチャイムを鳴らす。
「はーい。 ・・・あら、海成くん」
家の中から出てきたのは流二の母だった。 エプロン姿だったことから食事の準備でもしていたようだ。 流二も流二の母も海成の事情を知らないためニコニコと笑顔を浮かべている。
「あの! 流二はいますか!?」
呼吸を整える間もなく尋ねる。
「さっき帰ってきたと思ったら、バッグを置いてまた出ていっちゃったのよ」
「・・・ッ!」
「ごめんね、行き先を聞いていなくて」
それを聞いてすぐに引き返した。 当てもないが今は探すことこそが大事なのだと思ったからだ。
「海成くん、どうしたの!?」
背後から流二の母の声が聞こえるが無視だ。
―――どこ!?
―――流二はどこへ行ったの!?
―――もう時間がない。
―――僕の心臓も、家を出る時間も。
走ってこの辺りを探す。 だが旅立つ時間よりも先に海成自身に限界が来てしまう。
―――もう、駄目だ・・・。
―――ここへ来て意識が朦朧とするなんて・・・ッ!
海成は足取りが重くなり、ついには身体を支え切れず倒れ込んでしまった。
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