1人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだぁ、お前」
「!?」
人の気配を感じ、私は身を縮ませるようにして構えた。
男の人の声だ!
「…そんな睨むなよ。別に取って食いやしねぇよ」
彼は私に視線を合わせると、そっとその大きな手を差し伸べ私の頭を優しく撫でた。
「よく見たら、かわいい顔してんじゃん」
なんて言いながら私にふわっと柔らかい笑みを見せる彼に、思わずどきりとする。
「こんな所に来て、誰か待ってんのか?」
頬を撫でる彼の手に心地よさを感じながら、沈黙を返す。
だってまさか、迷子になったなんて言えないもんね。
「ふっ、かわいい奴だな。
……俺の家すぐそこだから、一緒に行かないか?
だけど…」
ふと彼は私の頭から手を離すと、ジッと私をなめるように見つめた。
「俺の部屋に入る前に、まずは一緒にお風呂だな」
「!?」
お風呂という言葉に、ぞくっと体が震えた。
「あがったら冷たい牛乳を飲もうな。そしたら、俺のベッドでぬくぬくしていいぞ」
私を安心させようとしてか、次は頬を撫でてくれた。
これも、気持ちいい。
次の瞬間体がふわりと浮いたかと思うと、私は彼の腕に抱かれていた。
「ホント、かわいいなぁ。
お前はきっと、俺の家族になる為にここにいたんだな。
待っててくれて、ありがとうな」
「…にゃー」
これで私、もう野良ネコじゃない。
最初のコメントを投稿しよう!