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襲いくるオークを大剣で薙ぎ払いながら、魔王城内の円形の階段を駆け上がる。オークの緑色の血飛沫を全身に浴びながらも、それでも歩みを止めず、ただひたすら最上顔を目指して走り抜けてゆく。
ここに来るまでに仲間を二人失い、今では選ばれし勇者である俺と、魔法使い・アレンの二人だけになってしまった。それだけじゃない。俺自身の疲労ももう、限界に達している。骨がミシミシと軋む音が全身を駆け抜け、ハァハァと肩で大きく息をし、体中から血を垂れ流しながら、剣を杖のようにしてなんとか前へ進む。
やがて、無限に思えた階段にも終わりがやって来て、代わりに目の前に禍々しい巨大な扉が現れた。
「勇者様。どうやら、この先に魔王が待っているようですね」
「ああ。準備は良いか、アレン」
「ええ。いつでも」
「同時に突入するぞ」
俺はアレンとアイコンタクトをし、一つ頷き、扉を脚で思いきり蹴り開けた。一斉に中に突入すると、暗い広間のような場所に出る。そしてその広間の中央、少し高くなっている場所に玉座があり、一人の男が座っていた。
俺たちを待っていたその男は……。
「待っていたぞ。勇者よ」
「ありきたりな展開だな。まぁ、途中から予想はできていたよ。魔王……いや、父さん」
俺が呼びかけると、父は、フハハハと高笑いをした。
「いつから俺が魔王だと気付いていた?」
「はじまりの町を旅立つよりずっと前からさ。あんたが家を出ていった一四年前、突如この場所に巨大な城が現れ、町がオークたちに襲われるようになった。偶然にしちゃ出来すぎている」
「ふっ、敏いガキだ」
魔王である父がゆっくり玉座から立ち上がる。同時に物々しい音楽がかかり広間に響き渡る。決着の時が来たようだ。
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