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「父さん。いや、魔王! 世界の秩序を乱すやつは誰だろうと関係ねぇ。俺が成敗してやる!」
「ふっ、いいだろう息子よ。本当は血が繋がっていないことなど、今はどうでもいい。ともに愉悦の時を味わおうぞ!」
「え? いや、ちょっと待って。タイム、タイム」
俺が休止を要求すると物々しい音楽は鳴りやんだ。「なんだ一体?」父が鬱陶しそうに言う。
「いやあの、何って言うか……え? 血繋がってないの?」
「なんだ、そんなことか。あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてない。聞いてないよ父さん」
はぁ、と父は大きく溜息を吐いた。そんなことで水を差しやがって、と顔に書いてある。でも俺だって水を差したくて差したわけじゃない。
「ごめん、でもさすがに気になって」
「なんのことはない。俺がまだお前の母・エリナと一緒に暮らしていた頃、エリナは俺に隠れて不倫をしていた。お前はその間男との子だ。つまり、俺とお前は血が繋がっていない。以上!」
「そ、そうなんだ……」
母の衝撃的な本性を聞き、思わず動揺してしまう。しかしそこではたと、ある可能性に思い当たる。
「ま、まさか……父さんが家を出て魔王になったのって」
「ふっ、やはり敏いガキだ。そのとおり! 俺が魔王に身を落としたのは、町を襲い、焼き払い、お前の母に復讐するためだ!」
なんということ。俺は頭を抱えた。我が家の個人的なごたごたが、多くの人を巻き込んだ戦火に発展していただなんて。
俺は再び強く剣を握りなおす。
「父さんの気持ちはわかった。だけど、勇者として、息子として、黙って見過ごすわけにはいかない! 勝負だ! 父さん!」
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