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俺が宣言をすると、再び物々しい音楽がフロアを揺らし始める。
「フハハハ! いいだろう。そんなに死にたくば今すぐ八つ裂きにしてやる。お前の父であったあのオークのようにな!」
「ストーップ! はい、音楽止めてー!」
音楽が止まる。「なんだ今度は」と父が渋々といった様子で尋ねる。
「え? 『お前の父であったあのオーク』って言った? 何? 俺の本当の父親ってオークなの?」
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてない。聞いてない」
父がはぁ、と再び溜息を吐く。溜息を吐きたいのはこっちだ。
「そうだよ。エリナ曰く、そこらへんにいたオークと遊びでやることやったら、お前ができたの。俺が問い詰めたら、そう白状してたよ。言わせんなよ恥ずかしい」
「ま、マジか……じゃ、じゃあ」
衝撃的な真実。だけど心当たりはあった。
「俺の身体が普通の人間より大きいのは?」
「そう。お前が人間とオークのハーフだからだ」
「俺の鼻の穴が妙に広がっているのも?」
「そうだ」
「下の歯が二本、牙みたいに上に伸びているのも?」
「そうだ」
「足が尋常じゃなく臭いのも?」
「それはお前の問題だ」
くっ、と強く唇を噛む。選ばれし勇者である俺がオークの息子だったなんて。信じたくないが、これだけ証拠が揃っていては信じるほかあるまい。
「大丈夫ですか? 勇者様」とアレンが俺の肩を持つ。その気遣わし気な声色は、手は、俺の出自を知ってもなお信頼していることを伝えてくれているようだった。
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