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「おかえり」
サラサラの少し茶色かかった髪、キラキラした笑顔。 男の子にしては高めの優しい声。
会いたくて会いたくてたまらなかった存在がそこにいる。
手を伸ばせばふれる距離……。
でも私にふれる資格があるのだろうか。
ためらう私の頭上から優しい声が降ってくる。
「大丈夫だよ、これは悪いことなんかじゃない」
その言葉に引き寄せられるように、私達は抱き合った。
「もう絶対離さない 君は僕のものなんだから」
私も彼以外考えられない。
他の人のものになるなんて、考えたこともなかった。
彼と私は一心同体だったのに。
新しい男の胸に抱かれるのは、私には荷が重すぎた。
そしてそれを受け入れられずに、私の体は限界を迎えた。
どんどん憔悴していく私をみて、とうとう医者が決断をくだした。
そして私は彼のいる世界へと旅立つことを許された。
「ただいま。私を待っていてくれてありがとう」
泣きながら彼に顔をこすりつける。
私の命はもう終わる。
でも彼と一緒だから怖くない。
「患者の容態はどうですか?」
「今度はうまくいった。 拒絶反応もない 。
移植成功だ」
「あの臓器はどこへやったんですか?」
「元の持ち主と一緒に逝かせてやろうと思う」
「まだ17歳だったのに、辛いですね。
せっかく親御さんが他の人の体で生かす選択までしたのに…… 」
「体の一部をなくさず送ってやれて良かったと思おう」
ノックの音がして、看護師が顔をのぞかせた。
「先生、ご家族の方へのご説明、お願いします」
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