第三章

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「白里……。やはり魔力の流れが違うな」 「そうね……」  息を飲む一行。シクナ、ウクロ、サヤは白里の地に入るなり、何か自分達の周りに変化が起きた事が肌で感じ取れた。空気なのか、魔力なのか、人の感知を越えた何かが肌で感じられる。  どこか、穏やかな気配が漂う――。 「………。」  シクナが辺りを見回すと、他の州の討士達がぞくぞくと白里に到着しているのが目に入る。  中には、珍しい獣を連れて来ている将軍も存在していた。 「ぬおお、あれは……大銀狼(おおぎんろう)……!」 「カガヤ将軍家の兵士一行ね……。相変わらず派手ね……」  騎馬車で到着している一行だが、シクナはその馬車を引いている狼に目を捕らわれる。巨体の狼で、馬以上に馬力のある獣だ。銀色の瞳と毛並が特徴で美しい。 「お、おお……。中々によい毛並みだ……」 「あんた……恥ずかしいから目の色を戻しなさい」  シクナにすぐさま注意を促すサヤだった。 「あちらは……。」 「各地の修行僧の人達ね。巫女の人達は後から来るのかしら」  サヤが言う。武器も持たず、この地へと足を踏み入れている者達もいる。ヒユネ様のような巫女や、修行僧の人達もここに来ている。 「(とばり)州の者達はどこだ?」シクナが尋ねるが、その者達は見当たらない。 「まあ、帳の事だから、私達より先に来てるでしょう」  サヤが答える。帳とは、笹澄の隣にある州だ。笹澄と因縁のある州で、今も問題の火種がくすぶっている。隣州であるからこそ、火種やトラブルは絶えない。 「いたぞ。帳だ。あれは恐らく帳の忍びだ」 「え……?」  ウクロの隠すような声が響く。サヤが目を向けると辺りを観察するように忍びが歩いている。まるで気配を隠すようにしている。
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