第一章

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「………。」  静かに廊下を歩くシクナ。サヤの頑固な表情は変わらず、城内にある廊下を歩いていた。  雅な廊下で、城とは別に巨大な屋敷が用意されている。  いかにも神聖な魔力が漂っており、その外観も同様だった。 「ヒユネ様、失礼いたします。シクナを連れてきました」 「どうぞ」  大きな一室の前まで来ると、サヤは畏まって襖を開ける。 「シクナ。付近の森の調査、ご苦労でした」 「い、いえ。これしきの事……」  言葉が上擦るシクナ。頭を深々と下げ、緊張が走る。 「まずは傷の手当てをしましょう」  ヒユネと呼ばれた巫女は、ゆっくりとシクナに近付いていく。そして、頭を下げたままのシクナに、手を翳す。 「これで良いですね……」 「ありがとうございます」  その力に目を見張るシクナ。いつ見ても驚く。傷の痛みが無くなり、魔力も回復している……。 「ヒユネ様……。これは妖魔の調査で出来た傷ではありません。またこやつめが妖魔を連れ帰り、手懐けようとして今し方出来た傷なのでございます!」  怒りながらそう述べるサヤ。その言葉を遮りたいシクナだったが、口から出た言葉は取り消せない。  人の口に戸は出来ないとはこの事だ。  緊張が走るシクナだが――。 「そうですか……。ですが、妖魔への対応はしてくれたことですし、今回は不問とします」 「ひ、ヒユネ様!」  思わず身を乗り出すサヤ。 「失礼ながら申し上げますが、こやつめは幾度も忠告を無視しています! 人に仇なす妖魔を城に入れ、手懐けるなど! もはや罰を与えないと反省いたしません!」 「サヤ、良いのです。貴方にも手間をかけさせて申し訳ありませんでした。皆を守るその責務、日頃から感謝しています。貴方が居るから、この城も平穏が保たれています」 「いえ、そのような勿体ないお言葉、私には身に余る光栄……! あ、あの……!」  サヤは感謝の言葉を述べるべきか、先にシクナの悪行を正すべきか、ごちゃごちゃになってしまうのだった。 「二人とも、ご無事で何よりです……。またすぐに次の任務が下りるでしょう。それまで十分に気を休めてください……」  その言葉を最後に、部屋を後にするサヤとシクナ。
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