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「………。」
様々な装飾に彩られた城内の廊下を歩くシクナ。向かうは、食堂の間だ。今も場内では巫女や食事係の者達が忙しく動いている。
ふと、シクナは廊下の突き当たりを曲がるのだが――。
「っ――!」
ウクロが素早く前に出る。次の瞬間には、ガキンと重く鈍い金属音が響き渡る。
「何をしているクレナイ……。我が主に刃を向けるなど、この俺が許さぬ」
バキン――という甲高い金属音を響かせて刃を弾くウクロ。
クレナイと呼ばれた九ノ一が目の前に現れる。赤い衣装に身を包み、首元まで延びた金髪に光るような鋭い瞳が見え隠れする。ウクロと同じように口元を布で覆い、素顔を見せない。
曲がり角で気配を消しての待ち伏せ――本気の不意打ちを試みていたようだ。
「またこやつは不祥事をしたそうではないか。その後始末を付けにきた」
刃を構えたままクレナイが答える。
「シクナはこの城の次期当主となる男……。我が主君である」
短剣を構え、臨戦態勢を取るウクロ。
「この城の主君に相応しきはサヤだ。その鬼ではない」
「クレナイ……。これ以上の侮辱は許さぬ」
「………。」
言葉の応酬が交わされ、激しい戦闘が巻き起こる。
また始まった……。どうすることもなくその場を見守るシクナ。
クレナイは、サヤの付き忍びだ。ウクロと同じように護衛などを担当するのだが……。
次期筆頭を決める事柄もあり、敵対心が強いのだ。
この城を担う筆頭――とても大事な瀬戸際がこの城には訪れていた。
しかし、それだけではない。シクナには、鬼の血が混じっている故に――。
クレナイには、いつもこうして背後を狙われている。
「その辺にしておけ。そろそろ飯の時間だ。不用意に暴れるな」
シクナが刃を収めるように呼び掛ける。
「ふん……」
クレナイは刃を弾いて、後ろに下がる。
「今回は見逃す。だが、次こそは覚悟しておくことだ」
その台詞と共に、クレナイは颯爽と消えた。消える瞬間にも花弁を舞わせるなど豪華な忍術だ。
「俺がいる限り、シクナの首は取れぬ……」
その決め台詞と共に刃を納めるウクロ。妙に格好を付けている感じが気になるシクナだった。付き忍びとしての責務を果たした満足げな表情が気になる。
そして一段落した事を確認するシクナ。忍びは不意打ちに失敗すると基本的には後に引く。城の中での争いは御法度なのだが。
「さて、行くぞシクナ」
「……もう先に行っておる」
息を吐きながら既に前を歩くシクナだった。
しかし、先程のクレナイは自分の命を狙っている。
今は筆頭を決める次期であり、筆頭はより優れた討士がその座に付く。
この城を守る者として、重要な立場を担う存在。
しかし――。
「………。」
廊下を歩くシクナ。
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