第二章

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「………。」  様々な装飾に彩られた城内の廊下を歩くシクナ。向かうは、食堂の間だ。今も場内では巫女や食事係の者達が忙しく動いている。  ふと、シクナは廊下の突き当たりを曲がるのだが――。 「っ――!」  ウクロが素早く前に出る。次の瞬間には、ガキンと重く鈍い金属音が響き渡る。 「何をしているクレナイ……。我が主に刃を向けるなど、この俺が許さぬ」  バキン――という甲高い金属音を響かせて刃を弾くウクロ。  クレナイと呼ばれた九ノ一が目の前に現れる。赤い衣装に身を包み、首元まで延びた金髪に光るような鋭い瞳が見え隠れする。ウクロと同じように口元を布で覆い、素顔を見せない。  曲がり角で気配を消しての待ち伏せ――本気の不意打ちを試みていたようだ。 「またこやつは不祥事をしたそうではないか。その後始末を付けにきた」  刃を構えたままクレナイが答える。 「シクナはこの城の次期当主となる男……。我が主君である」  短剣を構え、臨戦態勢を取るウクロ。 「この城の主君に相応しきはサヤだ。その鬼ではない」 「クレナイ……。これ以上の侮辱は許さぬ」 「………。」  言葉の応酬が交わされ、激しい戦闘が巻き起こる。  また始まった……。どうすることもなくその場を見守るシクナ。  クレナイは、サヤの付き忍びだ。ウクロと同じように護衛などを担当するのだが……。  次期筆頭を決める事柄もあり、敵対心が強いのだ。  この城を担う筆頭――とても大事な瀬戸際がこの城には訪れていた。  しかし、それだけではない。シクナには、鬼の血が混じっている故に――。  クレナイには、いつもこうして背後を狙われている。 「その辺にしておけ。そろそろ飯の時間だ。不用意に暴れるな」  シクナが刃を収めるように呼び掛ける。  「ふん……」  クレナイは刃を弾いて、後ろに下がる。 「今回は見逃す。だが、次こそは覚悟しておくことだ」  その台詞と共に、クレナイは颯爽と消えた。消える瞬間にも花弁を舞わせるなど豪華な忍術だ。 「俺がいる限り、シクナの首は取れぬ……」  その決め台詞と共に刃を納めるウクロ。妙に格好を付けている感じが気になるシクナだった。付き忍びとしての責務を果たした満足げな表情が気になる。  そして一段落した事を確認するシクナ。忍びは不意打ちに失敗すると基本的には後に引く。城の中での争いは御法度なのだが。 「さて、行くぞシクナ」 「……もう先に行っておる」  息を吐きながら既に前を歩くシクナだった。  しかし、先程のクレナイは自分の命を狙っている。  今は筆頭を決める次期であり、筆頭はより優れた討士がその座に付く。  この城を守る者として、重要な立場を担う存在。  しかし――。 「………。」  廊下を歩くシクナ。
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