第二章

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 自分は普通ではない。鬼の血が混じっているのだ――。  本来、妖魔であるはずの人に徒なす存在――。  忍びの中には、かつて妖魔に肉親や仲間を奪われた者も数多く存在する。忍びはその性質上、危険な任務や単独での調査を請け負いやすい。今でも命がけの戦いが各地で起きている。  妖魔である自分を信用できないのも、ある程度の理解は出来る――。 「………。」  この地の平穏を守るために、戦うために討士は存在している。 「………。」  そのまま静かに歩くシクナ。かつての自分を思い出す。山で暮らし、妖魔と扱われていた自分の過去を……。  人とはかけ離れた存在であった自分を……。  夕御飯を終えて部屋に戻るシクナ。様々な事が起き、シクナは部屋に入るなり、腰を休めるように座り込んだ。 「座敷童子か……」 「……。」  ふと部屋に気配を感じ、シクナが呼び掛ける。すると箪笥の隙間から、小さな妖魔である座敷童子が姿を表す。藁の服を着た幼い子供のような妖魔だ。  座敷童は、この城に住まう妖魔だ。珍しく人に害を成さない妖魔だが、精霊とも捉えられる行動を見せる、変わった存在だ。  何故自分にだけ懐くのは分からないが……。  自分が同じ人では無い存在だと、理解しているのだろうか……。 「やれやれ、今日は手酷く怒られた……。」  「………。」  寄ってくる座敷童子の頭を撫でるシクナ。座敷童子は臆病なのか、人が居ない時を見計らって出てくる。  鎌鼬も、慣れれば大人しくなるやもしれんのだが……。 「……お前からも、妖魔はそれほど恐れる存在では無いと言ってやってくれ」 「………。」  すると、座敷童子が黙ったまま姿を隠してしまう。どうやら申し出を拒否されたようだ。座敷童子は恥ずかしがり屋で、人前では滅多に姿を見せない。  息を吐くしか無いシクナ。これでは、竜を従えるという自分の夢も、どれだけ先になることやら……。
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