妖怪と薬

8/17
前へ
/224ページ
次へ
 未来の瞳の色が金から黒に戻った。 「彩兄」 「俺は、ケホ…大丈夫や」  彩兄はふらつきながも、タタタっと未来の元に駆けつけた。  二葉は、未来を下ろした。  未来は、しゃがみ込み駆けつけた彩兄を抱きしめた。  二葉は未来を見下ろし凝視し、奇異な目で未来を見た。 「お前は。なんだ?」  未来は聞いていない。 「彩兄。怪我は?」 「大丈夫や、油断してもーた。それより、あれ」  彩兄は、うしろを振り返り指さした。  陽一は焦燥しきった様子で立ち止まっていた。  ぽとり  と陽一の体から黒い丸が落ちた。  枯れ葉が落ちるように、ひとつ小さな妖魔は息絶えて陽一の体から落ちる。 「ようやっと薬が効いてきたようやな」  彩兄を地面に下ろし未来は胸を撫で下ろした。  陽一の皮膚から、沸騰した泡の様に妖魔が頭を出し、瘡蓋が取れるように妖魔がコロリと抜け落ちた。  胸やら腕やら足やらから、死んだ妖魔が出てきて地面に落ちた。  薬が効いた証拠だ。  良かった。間に合った。あとは妖魔がすべて陽一の体から抜け落ちれば助かる。  未来は心から安堵した。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!

71人が本棚に入れています
本棚に追加