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陽一の体の中には、まだ沢山の妖魔が残っている。
そういえば、妖魔の死骸が体から落ちなくなった。
嫌な予感がした。
陽一の口がギリギリと噛みしめ、唸り声をあげだした。
「やはり。効かなかったか」
二葉は、淡々とした様子で言う。
未来は、冷や汗を流し、ぎゅっと掌を握りしめた。
「どう言うこと」
「次の段階に入ったんだ」
「次の段階?」
「黒オーブは魂を喰って成長すると変態する。これから玉の殻を破って脱皮しようとしているんだ」
「だからなに?」
「もう邪念草の薬が効かないと言うことだ」
未来は言葉を詰まらせる。
―そんな…
陽一は、それでも体の中で戦っていた。子供たちの名を呼び、自我を保とうと頭を抱えて振る。意識が遠のき必死で堪える。
唸っては黙り、嗚咽をしては吐きを繰り返す。
(薬が効かないなんて…)
未来はショックを隠しきれなかった。
彩兄は嫌気を含んだ目で二葉を睨んだ。
「二葉君。君。こうなるって知ってたんちゃうか?」
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