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未来は呆然と二葉を見上げた。二葉は面倒臭そうに溜息をつく。
「そうだ。今朝方、ひとりで確認に来た。
よくこんな状態の奴を助かるなんて言ったもんだ。
すでに妖気なんて消えかけ、魔気がタダ洩れだ。
自我を保てているのが不思議なくらいだ。
それは賞賛しよう。
だが村の連中が言ったように、もう殺すしかない。
ここに着いた時点で殺してやろうかとも思ったが閻魔大王の命があるからな、ちまにやらせるために、生かしておいた。
だがもう、いいだろう殺すぞ」
(殺す?)
助けることしか考えてなかった。
そうだ。何度も何度も二葉は言っていた。
薬が効かなかった場合は殺すと、わかったと思っていた。
思っただけなのだ。未来は、絶対陽一は助かると根拠も無く思い抱いていた。
「ゆうた、あゆむ……」
ブツブツと念仏の様に陽一は呟く。
(殺すしかないの?)
死なせたくない。死なせたくなんかない。優太君たちの所に帰してあげたい。
「ヤマアラシちゃん。お願い。残り全部陽一さんに薬を投与して」
二葉は大きく溜息をつく。
ヤマアラシは毛を逆立て威嚇し陽一にもう一度向かった。
―俺は死ぬのか?
陽一は思った。
早くに両親は流行病で死んだ。
ずっと独り寂しかった。
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