プロローグ

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 以前、祖父と、こんな話しをした事があった。 「なあ、じいちゃん、なんで、お化けは、うちに近づいて来よるん」  畳の部屋の外窓から血の気の失った青白い女が、ギョロギョロと中の様子を伺っていた。 「せやな。それは未来の魂が強いからやよ」 「強いん?わからんわ。でも、強いと何で寄って来よるん?」  あぐらをかいている祖父と、その膝に小さく収まっていた未来は祖父を仰ぎ見た。 「怨霊や悪霊の奴っちゃな。皆。哀れな生き物なんやよ」  暗澹(あんたん)な部屋で祖父の顔が悲しげで、それは未来自身に向けられているように思えた。 「哀れ?」 「せや、可哀想な奴らなんや。未来には見えるか、奴らの体の中に小そうくて黒い丸があるやろう?」    祖父は外の悪霊を指さし未来に言った。外を見ると半透明の悪霊の体の中には無数の小さな黒い玉が、這うように蠢いているのが見えた。 「なんなん?あれ」 「あれはな妖魔なんよ。低級妖魔の黒オーブ言うんや」 「妖魔?」 「せや。妖魔は魂を食べる。黒オーブは霊に取り憑いて、魂を食いよるんよ。せやから徐々に人の心を忘れてもうて奴らは悪霊になってまうんや」    未来は渋い顔を浮かべた。 「お化けが、あの黒い玉・・・に食べられておるん?」 「せや。体の中でゆっくり、ゆっくりと喰うんや。未来は魂が強い。魂が強いとどうしても体から霊力が洩れてまって奴らが近づいてきよるんよ」  祖父は、またしても悲しそうに未来を見て、暖かな大きな手で、包み込む様に頭を撫でた。 「どう言うこっちゃ?」 「ここに魂あるでーって未来の体からオーラが出てるんや。魂を喰われた悪霊は妖魔の意思に抗えのーて、未来の魂を見つけてー。おまんまや。食うでーって近づいて来てるんよ」
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