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未来は、窓の外の悪霊を見て、自分が食べられる想像をして、ぞっとした。恐怖で祖父の胸に顔を埋め、ぎゅっと祖父の服を掴んだ。
祖父は愛おしそうに少女の頭をポンポンと触れ「怖がらせてもうたな」っと笑う。
「大丈夫や。じいちゃんがおる。じいちゃんが守ってやるさかいに。それになー。じいちゃんは、昔。退魔師やったんやよ」
「たいまし?」
「せや。妖魔を退治する。お仕事や」
「せやけどじいちゃんは、昔。団扇を作る職人やったって言うてたやろ」
「この世の仕事はなー。せやけど。あの世での仕事は退魔師やったんよ」
未来は頭を傾けた。
「この世?あの世?」
「ははは。未来には、まだ早かったかのー。あの世は死んだ人が行く世界。常世の国の事や」
「死んだ人が行くんやったら、じいちゃんは、あの世に行けないやろう?生きてるんやから」
「行けるんやよ」
そう言って意味ありげに笑いかける祖父の、ありし日の姿を思い出した。
遠くから、祖父を思い、誰かのすすり泣く声が聞こえてくる。沈鬱な空気の中、両親も兄も、祖父の死をとても悲しんでいる。
「未来は、魂が強いさかい、悪霊に狙われやすい。せやから一人でも生きていけるように、強ならなあかん。せやから退魔師にならへんか」
未来だけは、悲しみの、どん底から祖父の姿を見つけると歓喜した。
「どないしたらなれるん?」
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