私たちの〆はいつ?

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 ちょうど勇輝が帰ったころには水炊きが出来上がっていた。 もそもそと鶏肉と白菜をさらいあげたら鍋には金色のスープだけが残った。 私はその残りをタッパーに移し冷蔵庫に保管することにした。  その後に歯を磨いても、お風呂に入ってもベッドに横たわってからも言い表せられない感情が頭の中に残っていた。 私がいけなかったのかな。ほんとは二人でおいしく食べられたのかな。 なんて言葉が観覧車の様にぐるぐると回る。 ゆっくりとゆっくりと。留まることなく。 結局、私は2:00まで眠れることはなかった。  その日以降、勇輝との連絡は最低限のものになった。 具体的に言うとサークル棟が使える日程の連絡だけになった。 私はなんとも思わなくなっていた。 別に勇輝と出会うまでの日常にもどっただけなのだから。 そう思いながら日常を過ごしていたところ、冷蔵庫から使い忘れていた水炊きの出汁が見つかった。もうかなり傷んでいた。 罪悪感を感じながら流しにそれを捨てながら私はあの日の事をぼんやりと思い返していた。  私たち、そろそろ別れるのかな。 あの日がきっかけできっと別れるんだろう。 ちょうどこの時ぐらいがちょうどよかったんだよ。 どれだけ心が通じ合っていたとしても別れるときはほんの一瞬だってみんな言ってるし。 初めて行ったデートは花火大会だったなあ。 その時、勇輝が手を繋いでくれたんだけど冷やしパインでべたべたの手だったっけか。 夕日がきれいに見える河原を見つけたんだよ!嬉しそうに話す君に付いていってみた夕日も過去のものになっちゃうんだな。 足下も見えないくらい真っ暗な帰路でみた星々も忘れて勇輝は他の彼女とみることになるのかな。  言葉が雪崩のように脳に落ちてくる。 どかどかと遠慮無しに勇輝との思い出が脳みそを侵略する。なんとも思っていなかったはずだったのに。いざ、別れを意識すると押さえ込んでいたとっかかりが外れたように一気に感情が溢れてきた。 そのとき私は気づいた。 なんとも思わなくなったんじゃない。勇輝と会えない時間をなんとも思わないようにしていただけなんじゃないかって。会えない時間が愛を育むとは誰が言ったんだろう。愛情ってきっとただあるだけじゃ見えない。何もしていない時間、一人の時間を積もりに積もらせてようやく視認できる埃ようなものなんだろう。  「別れたくないなあ」  気がついたらぼろぼろと涙が溢れてきた。 私、馬鹿みたい。 一人で勝手に盛り上がって。八つ当たりじみたことして。突っぱねて。 それでも一緒にいたいなんて。 どれだけわがままなの。こんな自分が嫌だ。本当に恥ずかしくてしょうがない。 もう誰にも会いたくない。そういう時に限って玄関のチャイムは鳴ってしまうものだ。
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