私たちの〆はいつ?

1/5
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
 夜が深まってきた。 20:00から練習を始めて1時間半。 バンドメンバーも集中力が切れてだらだらとスマホをいじり始めるころになってきた。 朝起きて、昼は授業を受けて、夕方はバンドで集まって練習。それが私たちの日常だ。 今日はたまたまリードボーカルの拓馬が昼から夕方までのシフトでバイトをしていたため20:00からの練習だった。 だいたい、私たちの大学は16:40には授業が終わる。 それまでの隙間の時間を埋めて夜から練習をすることは稀だ。 それでも私たちは20:00に集まる。それは音楽が好きだからだ。  だらだらと何の気なしに、スマホを眺めていたら一重瞼のくっきりした目線が特徴的な後輩とその恋人と思われる男性の映し出されるSNSが目についた。 『一か月記念!これからもよろしくね!』 とデコレーションされたショートムービーが上げられていた。 何の気もなしに100点!のリアクションを送る。 一か月記念なんてまだまだ一番楽しい時期なんだろうな。 と心の中で呟く。 あれ、なんで私こんなこと思うんだろ。 と考え始めたころに練習は再開された。  その後、30分ほど練習を軽くした後すぐに解散した。 そのままみっちりと1日を過ごした重たい足取りで閉まりかけのスーパーに向かう。 残暑も終わり朝晩は冷え込むこの季節にしては効きすぎているエアコンの風を浴びながら、半分にカットされた白菜と鶏モモ肉を加えて買い物かごに入れた。 今日は水炊きにしよう。 そそくさと最低限のものだけをかごに入れて帰ろうとする時に一件の通知が入る。 「今日、家に行っていい?」  一言、恋人の勇輝からだった。 この男はどうしてこうもタイミングが悪いのだ。 ついさっき、一人前の白菜と鶏肉を買い終えてレジを出たばっかりなのに。  スーパーを出ると鈴虫やコオロギの大合唱が広がる。 街灯も少なく月明かりだけの真っ暗な道を歩きながら後輩のストーリーを見返していた。 そうしたら新しく二人分のオムライスの画像が追加投稿されていた。 羨ましい。と素直に感じた。 そう感じるのもおかしな話だ。 だって私は今から恋人と二人で鍋をつつくのだから。 でも、きっと付き合って一か月の頃のように鍋をつつくことはできないと思い込んでしまう自分がいる。 ひゅうっと冷たく風にほほを撫でられると自分の心の貧しさを咎められているようで心苦しい。 柔らかな月明かりに包まれながら一人で歩く帰り道は心地よかった。 本当はこの白菜やらも一人で食べたかったな。なんて思いながらも 「今日は一人がいいや」 と言いだせない自分がいる。 勇輝になんて思われるかな。なんて考えてしまうのだ。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!