知っている私と知らない私

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 時計を見て唖然とする。かれこれ二時間も寝てしまっていた。  気圧のせいか、激しい頭痛がする。また、寝る前より『今日は何かが私を待っている』という予感が強くなっている。あながち、気のせいではないのかも知れない。  その後も、頭痛とそのことが気になっていたのとで、作業は全くはかどらなかった。  そのまま、夜。  部署の全員、もちろん部長も帰ってしまって、私一人になってしまった。  と、思ったのだが。 「佐藤さん、手伝いますよ」  後ろから声がして振り向くと、そこには缶コーヒーを両手に持った新入社員の竹田くんがいた。 「あ、ありがとう。でも私コーヒー苦手なの」 「ありゃ、すみません。じゃあこれ二つとも僕の分ですね」  竹田くんの、そのどうでもいい一言を付け足す無邪気さが、少し可愛らしかった。  竹田くんのおかげで、早めに仕事が終わった。 「今日は本当にありがとう」 「いえいえ。これからもお互い助け合っていきましょうね」  本当に竹田くんに救われた。これなら、仕事を頑張れる気がする。
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