知っている私と知らない私

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 帰り道、雨が滝のように降っていた。  槍のような雨に打たれ続ける私の折り畳み傘は、今にも壊れてしまいそうだ。  狭い道路に来た。まだ頭痛がする。帰ったらシャワーを浴びて早めに寝よう。  そう思っていたときだった。  完全に油断した。  下をよく見ていなかったから、マンホールがあることに気付かなかった。そして、そのマンホールに足の裏が触れた瞬間……  ツルッ。  あ、滑った。  視界が揺らぐ。  どちらが上でどちらが下なのか、また、どちらが右でどちらが左なのか、分からなくなった。  転びそうになって目をつむる寸前に見えたのは、びっくりするほど眩しい、車のライトだった。
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