知っている私と知らない私

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 また、夢を見た。  気がする。  これ以上ないほどに、心臓がバクバク鳴っているのだ。  考えても、忘れた夢なんて思い出せない。仕方なく、私は考えるのをやめて職場に行った。 「おはようございます」  あれ、部長が来ていない。心臓のバクバクが増した。  そして、部長が交通事故で亡くなったことを知った。  その瞬間、ある感情が私にどっと押し寄せてきた。  悲しみや悼みとは違う、罪悪感のような感情だ。  なぜ、そのような感情が私に押し寄せてくるのか分からなかった。逆に、これから差別に苦しまなくて済む。私にとって悪いことは何もないじゃないか。どうして私が罪悪感を感じなければいけないんだ?  私のせいで死んだわけじゃあるまいし。  完
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