知っている私と知らない私

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 初めてこの世界に来たのは、一週間ほど前だ。  そこが、概念的に「夢」なのか、夢ではない「別の世界」なのかは未だに分かっていない。特に知りたいわけでもない。ただ、その一週間ほど前、起きたと思ったけれどなんか起きた時の感覚と違うと思って、周りを見渡したら、そこは真っ白な小さい部屋だったのだ。 「お前、死にたいんだろ」  まだ何も理解できていない私に、いつのまにかその部屋にいた男か女かよく分からない人が言った。 「え?」 「来るんだよ、ここに」 「……何がですか?」 「『死にたい』と思ってる人が」
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