知っている私と知らない私

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「まあ殺すと言っても事故で死ぬことになるけどな。それで、死ぬ数日前にここに来るってわけだ」  オトコオンナが言った内容は理解できたが、まだ自分が死にたいと思っていたことと、数日後に死んでしまうことの実感がわかない。だからか、死ぬことへの恐怖もあまり感じていない。 「でも、なんでここに来る必要があるんですか?」 「さあ、それは自分も分からん。本当に死んでもいいか確認するんじゃない? いざとなったら死なせないこともできるから」  死なせないこともできるのか。 「で、死にたくないと思うか?」  そう質問されて、私はこれからのことを考えた。  しかし、想像しても、あまり良い未来が待っているとは考えにくかった。それどころか、これからもずっと部長の差別に苦しんでいる自分の姿さえ見えた。 「……死んでも、いいです」 「おし。じゃあ、決まりだな」  こんなにあっさりと決めてしまって大丈夫だろうか。
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