知っている私と知らない私

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 こちら側の世界に来て二日目。  一番驚いたことは、現実世界に戻った時は、この世界の記憶が一切ないことだ。 「だって、向こうの世界でこの世界のことを知られちゃまずいからな」  オトコオンナは、そのことに関してそう言った。確かに、一定数そのことを知っている人がいれば、誰かがこの世界のことを言い出すと、他の人達も同調して、大変なことになりかねない。  その後も、一週間ほどここに来続けて、主に二つ分かったことがあった。  一つは、私は、雨の降る夜に滑って転びそうになったところを、車にはねられて死ぬということ。その気になれば死に方も変えることができると言っていたが、別に死に方なんてどうだっていい。  もう一つは、死んだ後はこちらの世界にももう来ないということ。死んだ後どうなるのかオトコオンナに聞いたら、「そんなファンタジーなこと、知ってるわけないだろ」と言われた。  もうこの時点でだいぶファンタジーなんですが。
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