いつも静かに笑っている

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いつも静かに笑っている

 私の名前は、カルダモン。とある事情があって今は人間しかいない場所で暮らしている。その中で出会った人たちのことを書いていこうと思う。  今回は、”怒らない人“。その人は、アルバイト先にいる。例えば、他の店員が注文を間違えた時は、「慌てずにやればいい」と慰め。わがままなお客さんがいた時は、丁寧に説明し、納得してもらい、終わった後も文句を言わない。    私は不思議に思ったので聞いてみた。 「あんなにひどいことがあったのに何故怒らないのですか?!」そう言うと、その人は笑顔で言った。 「それは、意味がないからだよ。」 「意味がない?」私は彼の言っている意味がよくわからなかった。怒ることに意味なんてあるのかなと。 「そう、色んな意味でね。  ちょっとしたことで人の欠点見つけて怒る事は、まず自分のMP(メンタルポイント)の無駄だし、  わがままな人に関しては、私が進んで怒って、その人の性格や考えを正してあげようとは思わないしね。  簡単に言うと、どうでもいいんだよ」  「まあ、深く考えないでくれ。適当に言っただけだから。仕事で嫌なことあったら、相談乗るからさ」  彼はそう続けて、私の肩をポンと叩き、去っていった。  “怒り“の感情をなんらかの事情で無くしてしまった彼の背中は、寂しく、虚無のように感じた。
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