涙の代わりに花びらを

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 二人とも母親の帰りが遅く、家に帰っても部屋には明かりの一つさえついていない。 中学生と言えども、茉莉花も明日香もまだ子供だ。寂しいと思う気持ちは互いに同じだった。 特に茉莉花の母は、茉莉花に関心がないのではと思うほど朝も夜も働きっぱなしで家にいる時間は少なかった。 茉莉花が学校から帰宅しても、いつも食卓テーブルの上には数枚のお(さつ)が置いてあるだけ。温かな手料理なんて、もうどれくらい口にしていないだろう。 「うちもだよ。うちの母親は多分外に男もいるし、基本私のことはどうでもいいみたい」 茉莉花の話に明日香も口を尖らせ同調してくれた。 だからだろう。学校が終わったあとも、二人一緒にいる時間は必然的に多くなっていた。 「私ね、将来はキャリアウーマンになってバリバリ働くのが夢なんだ!結婚なんて興味ないし子供もいらない。自分の人生、自分だけのために楽しみたい!」 「うん!明日香ならできると思う!」 自分の意思をしっかりと持ち、言いたいことはハッキリと言える。 そんな明日香に茉莉花は憧れ、尊敬していた。 自分も明日香のように芯のある人間になりたいと、この時は心からそう思っていたのだ。
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