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「へぇ……一緒に暮らすのか」
飲んでいたミネラルウオーターのペットボトルをベッド脇のテーブルに置いて、環さんがベッドへ入ってきた。
「そうみたいです」
僕はすでにベッドの中で眠気を感じながら、でも環さんが来るのを待っていた。
兄の、あの面白いほどの浮かれた様子を環さんに告げ口をしてしまった。だって、本当にとても浮かれていてたから。今日の仕事だって、ものすごく早くに終わらせて、早々に引き上げようとするし。時間があれば家具や不動産関係を眺めているし。しかも、今まのでような利便性のいいところじゃない、とある地区の不動産ばかり。拓馬さんの職場近くにでも新居を構えるつもりなんだ。前に身辺調査をしたし、あの会社には花を送っているから知っている。
「ふーん」
まぁ、どこでも構わないけれど。あの人のことだから、あの調子で、楽しそうに今まで以上の仕事をしてしまうだろうし。
「もうすごいんです。ずっとニコニコしてて」
「へぇ、あいつが?」
「えぇ」
「恋は……ってやつか」
もう深夜の二時だ。夜更かしをしてしまった。早く寝ないとと思いつつ、つい環さんに話しかけてしまう。とても忙しい人なのに。寝かせてあげないといけないのに。とても忙しい人だから。つい……。
「すごいな……あいつのそんな顔が見られるのは楽しみだ」
「毎日となると……さすがに、ですよ?」
「そうかもな。俺は当主就任パーティー以来だからな。あの時もすごかったっけ」
「そうだったんですか?」
「あぁ」
環さんは兄の隣にいたっけ。
「女が誰も寄ってこなかった。来てもすぐに退散したくらい」
「あぁ、確かに……そうですね」
二人が並ぶ光景はもう見慣れたものだった。学校の中でこの二人が並ぶと女子たちがざわめいていたのを思い出す。その時は、その兄の隣に並ぶこの人ばかりをこっそり盗み見ていた。とてもかっこよくて、見ているだけでもドキドキして。
そう、見ているだけで充分って……思ったっけ。
「あいつ、もうパートナーがいるってドヤ顔してたしな」
そんなパートナーは、あの会場でどう立ち振る舞えばいいのか、と迷っていたんだろう。拓馬さんが遠慮がちに会場の隅にいたから声をかけたんだ。
そして、二人で、会場の中央に花開いた、とても、とても凛とした大輪の花を愛でていた。愛しい人っていう、花。
「えぇ」
「まぁ、でも」
「?」
環さんが笑いながら僕をベッドに組み敷くと、腰に手を添えて、身体を密着させる。
「わからなくもないな」
「?」
「宝物は見せびらかしたいだろ?」
「……」
「そりゃ」
「……」
見ているだけで、充分って……思ったっけ。
「……っ」
環さんが僕に覆い被さって首筋にキスをした。キスマークのつく口づけの強さに、小さく声が漏れてしまう。
「あっ……ン」
重なって環さんの重みを感じる。
「ダ……メ、もう、二時、です」
「明日は仕事、遅くからだろ?」
「ン、でも」
「俺が送る」
「はぁっ、あっ……ン」
環さんのが自分に触れて、ゾクゾクした。
今日、何度も受け入れて、何度も僕をイかせた熱を腰の辺りに感じて、さっきまで滴りそうなくらい快楽で濡れきっていた身体にまた火がつく。
「俺のだって、思ったよ」
「え?」
「あの就任パーティーの時」
何が?
「ん、やぁ……ぁ、あぁン」
貴方のものって何を思ったのだろうと尋ねようとしたけれど、服をめくりあげられ乳首を食まれたら、もう。
「ダメっ……あ、あ、あ」
蕩けてしまう。
「雪は、俺のだって」
「あ、はぁっ……」
違う。そう思ったのは、僕のほう。
「環……さん」
「?」
身体をずらして、貴方の重みから逃れると、逆に覆い被さって、僕にはあまりない腹筋に口付ける。
「ン」
口付けを肌に落としながら、腰の辺りに手を添えて、そっと付けたんだ。貴方にキスマークを僕もつけて、それから、唇で熱に触れる。
「雪」
「ン……ふっ……ん、ぁ、おっきい……」
さっきまで僕を何度もイかせてくれた熱に口付けて、舌で濡らして、ゆっくりその先端から丁寧にしゃぶりつく。
「っ、雪」
「ふっ……ン、ぁ……あっ……」
すごく硬くて、全部なんて到底口に含めない。でも、貴方はね?
「あっ……」
僕のものなんだ。
「あっ……もう」
「見せて」
僕のものだから。自分から服を乱して、愛しい人に跨った。さっきまで貴方ので抉じ開けられていた身体はその熱の先端に触れただけで身震いしてしまう。まだ柔らかくて、快楽が残っているそこは。
「はぁっ……ぁ、あっ」
貴方のを嬉しそうに咥えて、ズブズブと奥まで。
「あっ、あっ」
とても大きくて太くて、たまらなくて。
「あぁぁぁぁぁぁ」
根本まで全部飲み込んだら、甘い甘い吐息が溢れて、自分のそれも嬉しそうに濡れた。
「あ、あ、あ、や……ぁあン」
自分から腰を振って、声をあげた。
「あ、ン」
跨って、腰を振る僕を眺めて、ちっとも筋肉のつかなかった薄っぺらい胸の粒をキュッと指で摘まれる。
「やぁあ、ン」
貴方のを身体の奥で咥えながら、乳首をいじめられて、とても気持ちよかった。
「あっ」
すごくすごく逞しくて口で全部は頬張れないから、身体で全部独り占めしながら、腰をくねらせ、この逞しい身体を堪能しながら、貴方に覆い被さって、肌に口付けた。赤い痕のつく口付けを。
「ン、ぁ……」
僕こそ、思ったんだ。
「雪」
「あ、あ、あ、ン、ア……ン」
あのパーティーの中心にいるとてもとても綺麗で凛々しく咲き誇っていたこの人は、僕のだって、内心、すごくすごく思っていた。
「環さん……」
僕の好きな人なんだって、僕だけの人なんだって、そう思っていた。
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