僕らは生きているから怒るんだ

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 ここへ来てどれくらいの時間が過ぎたのだろう。時の流れを気にせず、ただ毎日を生きているだけの僕には知る由もない。  この場所には全てが揃っているため生きていくには困らない。食事は毎日3食ではないものの、身体のことを考えて毎日調整してくれるシステムのようだ。  温度管理もしてくれる。寒くなれば震えない程度の心地良い温度に、暑ければ部屋を涼しくしてくれる。オートマチック化が進む時代、未だに色々な操作を手動で行っているらしいこの施設。たまに忘れているのか寒かったり暑かったりする時もあるが、ほんの少しの間だし生きていれば忘れることもあるさ。僕は楽観的な性格なんだと思う。 「なあ、ガラスの向こうの世界ってどんなだろうな。」  同居している男が言うが、僕は知っている。ガラスの向こうは僕らが生きられない世界だということを。
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