今はおやすみにつき

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眠る観月に毛布をかけて、依頼主たちに向けて報告書を作成し始める。 こうした書類に強いのは、我が家で一番の頭脳派〈リライア先生〉だろう。 リライア▷報告書の文面作成が終わりました。文章化はハヤーさんにお任せします。 「分かりました。書き起こして起きます」 ハーレムネットワークにより転送された文章を頭の中で反芻したハヤーは二三頷くと、机を借りて報告書の作成を始める。 あとはこれをギルドへと送って、全依頼はコンプリートだ。 「これで、これからは少し時間が空くかな?」 ▷そうですね。どうでしょう?ここら辺で一度、女神様に関しての情報を集めてみては。ここに来た当初に比べて、頼れる人も増えましたし 「そうだなー。そろそろ、何が起きているのか調べてもいい頃合いだろう」 魅玖▶︎女神と直接コンタクトができるのは、この世界に三人います 「え?三人もいるの?」 ▶︎はい。一人は【 勇者 】。そしてもう一人は【 大司教 】。どちらも、あったことがありますね 「シモンは今、投獄の真っ最中。しかも、リンクは切れてるんだろ?」 ▶︎リンクは切れてますが、腐っても【 大司教 】何かしらの情報は持っていると思います。もしかしたら、思いもよらない情報が飛び込んでくるかもしれません。 「相談相手を選んでる場合じゃないか。少しでも情報を得ないとな」 ▷現在もリンクが繋がっているのはあとの二人ですね 「勇者は分かるけど、あと一人は誰なんだ?まさか、王様?」 ▷いえ、彼は神託は受けていません。むしろ、神託から一番遠いところにいるのが、【 人の王 】というものです。 「そうなの?」 ▶︎詳しい話はまた。今、注目すべきはもう一人の存在。何を隠そう、その人物こそこの世界を混乱させている存在。 「まさか……」 ▷▶︎そう…【魔王】です。 魔王も神託を受けているのか?驚いたな。 神とか女神とか、そういう存在を〈正義〉とするなら、魔王やそれに連なる魔族は〈悪〉といわれる存在だ。 一番縁遠いという話が出たが、その時にチラリと頭を掠めたのは【魔王】という存在だっただけに驚きが隠せない。 「もしかして、あれかな?女神はあらゆる方面から、〈平和ルート〉を行おうとしているってこと?」 ▷そういうことです。人族存亡ルートを【 勇者 】が。魔族存亡ルートを【 魔王 】が担っていると考えていいでしょう。 ▶︎【大司教】は指図め、〈 人族存亡のための補佐 〉といったところでしょう。 なるほど。魔族の力は他族とは比べ物にならないほど強大だ。一人でも大丈夫だと、女神も判断したのだろう。 「だとすれば、人族も舐められたもんだね。人間はそんなに弱くない。今回のように、一致団結すれば魔族を辛くも退けることができる。人族の強さは単純な腕力の強さじゃ計れないもんさ」 「確かにそれはそうですが、今回のそれは主様だからできたことでもあると思いますよ」 「うーうー…。」 「そうです。恐らく、他の方々では無理だったでしょう」 報告書作成の手を止め、ハヤーは振り返ると付け加えるように答える。 向かいに座るシルクとリリィも同じ意見なのか頷いてみせた。 「多種族が入り乱れるこの世界です。敵味方の線引きは難しいところですが、サカエ様も観月様も、その線引きは他の人族の方々よりも曖昧に見えました。現に、魔族である私や魔物であるシルクさん、ゴーレムのハヤーさん、天使族であるルーシーさん。沢山の種族が入り交じりこのハーレムは形成されいます。こんなこと、普通なら有り得ません」 「種族とか関係あるのか?みんな、可愛い女の子たちじゃないか。俺にはみんな等しく、大切な家族に思えるよ?」 「そこが他の方々とは違う点ということですよ、無節操天然スケコマシ主様」 「…お前、本当は俺の事嫌いだろ」 「愛しているに決まっているじゃないですか。好きな人には意地悪したくなる性格なんですよ、私。ふふ…!」 ハヤーはチロりと舌を出して悪戯っぽく笑ってみせる。まったく…本当、可愛いヤツだこと。 『俺もだよ』そう呟き、苦笑するのだった。
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