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噂を聞きつけて、名指しで指名してきた依頼は四つ。
それ以外にも、十ほど依頼があったが比較的に簡単な内容だったので、ギルドの仲間たちが手分けしてくれることになった。
なので、当面向き合うのはこの四つ。
〇【魔族の目撃が相次ぐ村の調査】
〇【風の谷にいる古代鳥の調査】
〇【火山地帯にある遺跡の調査】
〇【エルフ族とドワーフ族との調印】
である。
王様からの依頼である魔族の調査は、先にギルドからA級が調査に向かっているようだ。
しかし、未だに二月ほど潜入しているが魔族の尻尾は掴めていないとの事。
最近は、ガセネタである説が出ているようだ。
残りに関しては現場に向かう際に話していこう。
「魔族は未確認なんだよね?なら、行ってさっさと終わらせてこようよ。」
「そんなに簡単に行くかな?火のないところに煙は立たないっていうぞ?ルーシーはどう思う?」
「うーん。魔族の中には気配を消すのが上手いヤツもいるからねー。そうなると、上級魔族や下手すると四天王の可能性も出てくるかな・・・。そうなると、A級の冒険者がそこに集まっているのはありがたいかな。」
ルーシーは依頼書を手にしながら、目を閉じ様々な予想を捻り出していく。常に最悪のケースを想定し、対処しようとする姿勢はさすが天使族の族長というところか。
「ルーシーは魔族とは戦ったことがあるんだよな?」
「あぁ、あるよ。ヤツらは下級魔族でも力がある。下級一体は、B級冒険者とほぼ同じと思っていいよ。上級や四天王になれば、A級かそれ以上になるね。」
「熾天使だと、どこまで相手にできそう?」
「私一人でって前提の話?ならそうだねー・・・上級までかな。四天王なら、一人だけなら足止めくらいできると思うよ。倒すとなると、難しいかな?」
顎に手を当てると、目を細めてルーシーは首を振った。できることなら、戦いたくない。そんな相手だと、遠回しに告げていた。
「あら?てっきり、魔王や勇者と肩を並べるかと思ってたよ。知り合い(メイさん)に聞いた話と少し違うな。」
「魔王や勇者と肩を並べる!?はは!ないない。百年前に戦ってた時だって、上級魔族と戦って五分五分くらいさ。大戦では魔王はおろか、四天王すら出てきてないしね。ここ数十年で、天使信仰で人間たちの理想像が一人歩きしてたんだろうねー。」
「そうか。じゃあ、もしも魔族が現れたら、A級と協力して俺たちで戦おう。四天王が相手なら・・・〈魔王アスモデウス〉で闘うことになるかもしれないな。」
「頼もしい話だけど・・・それは、やめておいた方がいいかもしれないね。」
「ん?何か、問題でもある?」
「まず、この世界に魔王が二人いること。それは、過去には前例がないほど異常な事態だ。人間側の王であるガイウスは今のところ味方という目で見てくれているけど、それもいつまで続くか分からない。もしかしたら、今回の依頼はそれを確かめる目的もあるかもしれない。」
「なるほどね?本当に魔族と繋がりがないのか、討伐させて確かめようってわけか。」
「もうひとつは、魔族という存在の問題。魔族は人間が大嫌いだからね。人間の味方をしてる魔王なんて、何としても滅ぼしたい存在に違いないはず。魔族の面汚しとして、必ずアスモデウスを処刑しに来ると思うんだ。」
「なるほどな。四六時中、警戒しないといけない上に、拠点がバレたらここのみんなにも迷惑がかかると。うーん。なら、何としても、栄咲遊助=アスモデウスって図式だけは、バレないようにしないといけないわけだ。」
「そうなるね。だから、少しでもリスクを減らすために、今回はアスモデウスの名前も、あの鎧も目に触れさせないようにしないといけない。」
「なるほど。分かった。つまり、この腕だけで闘えばいいんだな?」
「大丈夫?いけそう?」
「ふふ!任せたまえ。俺はアスモデウスであると同時に、世界で一番女の子を愛する男だぜ?君たち、女の子を守るためならどれだけでも強くなってやるさ。」
「・・・女の子って///もう、そんなふうに、言われちゃうと信じるしかないなぁ。それじゃ、私も熾天使として天使族の皆の未来のために頑張るよ。うん!」
「あぁ、みんなで一緒にやろう。共同戦線だ!」
「「おぉー!」」
俺たちはルーシーの言葉に頷くと、それから昼食時になるまで作戦を話し合った。
それから、街でアイテムをあらかた購入し、最後に魔道具屋さんのメイさんの所へと顔を出すことに・・・。
「メイさーん!遊びに来たよー!」
「遊びに来たなら、出直してきて!今、手が離せないから!」
「え、えー・・・。」
ー ガヤガヤ・・・!
ー あ!サカエさんだ!すごい、本物!?
ー キャー!やっぱり噂は本当だったんだ!
ー ご利益!ご利益!やっぱりの“結の矢”には恋愛の神様が・・・!
ー 〈爆裂魔法〉?このスクロールいくら!?
ー メイさん!僕と寄りを戻してくれえぇぇー!!
ー この水晶って、純度高いな・・・。魔法に使えそう。魔王様にお土産にしようかな・・・。
ー 英雄御用達の店・・・。さすがに品揃えがいいなぁ。
そこはもう、戦場のような忙しさだった・・・。
「・・・ちっ!この中に、ゴミがいやがるな。」
「「え?」」
俺は縄を取り出すと、店内へとズカズカと足音を立てて乗り込んだ・・・。
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