王様の依頼、その前につき

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男を回収し終え、事の顛末と申し訳程度の反省の言葉をしたためた文をマタイさんに手渡すと、再びメイさんの店に戻ってくる。 扉をくぐれば、心配そうな顔でメイさんが出迎えてきた。 どうやら、店の前でお説教を貰っている所を見られたらしい。 「サカエくん!本当にごめんね!変なことに巻き込んじゃって!」 「いやいや、俺の方こそごめんね。仕事の邪魔しちゃって。」 「邪魔だなんて、そんなこと。むしろ、仕事を邪魔してたのは、あの人の方だから。私はむしろ、助けられたくらいだよ。本当、ごめんね。」 メイさんが紅茶を用意してくれた。 紅茶の輪舞曲を眺めながら、観月たち女の子勢は目を輝かせている。 この魔法は何度観ても飽きない。 人を驚きと感動に包む優しい魔法。 まさに、平和を表す魔法だ。 ぜひ、大切にして欲しい・・・。 「あの人、貴族の後ろ盾がある商人の息子だって聞いたんだけど、手を出して迷惑じゃなかったかな?」 「大丈夫!大丈夫!貴族といっても、知り合いの人だから。ほら、あの紫水晶を売ってくれた人だよ。」 「あぁ、〈人避けの呪い〉がかかったアイテムを売った人か。」 たしか、貴族のお嬢さんが置いていった物だとかなんとか。 たまたま、置いていった物にそんなの効果があったとは運が悪い。 「あのあと、紫水晶の持ち主だったお嬢さんとそのお付の人が来て、謝罪してくれたんだ。慰謝料代わりに沢山のお金を置いていってくれてね。なんやかんや、その後もご贔屓にしてくれてるんだよ。だから、そんなに気にしなくて大丈夫だと思うよ。」 「よかった・・・。そうそう、俺たちも今から依頼に向かう途中で、実は品物が欲しくて寄ったんだ。」 「そっか!ウチにある物でよかったらなんでも見ていってよ!どんな物がいいかな?」 「実は、これを買いに来ました!」 シルクに頼んで持ってきて貰ったのは、一つの魔法が収められたスクロール。 「え?スクロールは必要ないんじゃない?魔法ならアスミさん*に叩き込まれた無詠唱魔法があるじゃない。しかも、威力無茶苦茶の。」 *女神アスモデウス・・・転生をお手伝いしてくれた綺麗なお姉さん。こちらの世界では凄腕の魔法使いとして潜伏していた。メイさんはアスミさんのお弟子さん。ちょくちょく、余計な発言をして、メイさんはお仕置されている。 「前回の戦いで、俺が倒れた時や不在の時に彼女達を守る術がないことに気付いたんだ。何かあった時に、使える手段は豊富にあった方がいいと思ってね。」 「なるほどね。聞いた話だと、サカエくんも回復魔法はそんなに得意じゃないって話だし、もしも、観月ちゃんが戦闘不能になったら、一気に状況は劣勢に追い込まれるかもしれないもんね。回復魔法や大魔法くらいのスクロールは持っていていいのかもしれないね。」 メイさんは頷くと、いくつかスクロールを見繕って準備してくれる。 中回復魔法を五個。中攻撃魔法セット(火、水、風、土)を五セット。そして、【究極爆裂魔法(エクスプロージョン)】を五個を用意してしくれた。 おぉー・・・ついに登場したぞ。 〈 エクスプロージョン 〉・・・これ使って大丈夫なのか? ヤバイ匂いしかしないんだが・・・。 「ありがとう、大切に使うよ。代金はこちらに。」 「うんん!お金はいいよ、今日は助けて貰ったから。」 「いやいや、それとこれとは、別だよ。こういうのは、しっかりしておきたいからね。」 「そう?だとすると、私の気持ちが済まないなぁ・・・。」 「ふふ!それじゃあー、今日のパンツ!拝ませてください!それか、胸を!胸を揉ませてください!」 「ふぇっ!?え~えぇ~・・・?」 机に擦り付ける程にお願いすると、口元に指を当てたメイさんは顔を真っ赤にすると視線をキョロキョロとさ迷わせて、周りに助けを求める。 ここで、当然動くのは彼女だろう。 だが、俺だってここで引くわけにはいかない。 何としても、厄介な王様の依頼の前に!英気を養う!つまり、ハレンチしたい気分なんだ! 「ユーちゃん・・・?ハレンチなことは・・・。」 「まぁ、待て観月。これは助けた正当なお返しだぞ?スクロールのお金は払った。商品に対する対価は払ったんだ。だけど、まだ助けた対価は貰ってない!そう!ギブアンドテイク!」 「見返りを求めて人助けなんて、ヒーローの風上にも置けないよぉ・・・」 「残念だったな♪俺はヒーローじゃない。魔王アスモデウスなのだぁ~~!」 「「あー、そうだった・・・。」」 「だから、対価はちゃっかり、貰うのだぁ!グワッハハハハ・・・!」 ビシッ!と、自身を指さした俺に周りで見ていた女の子たちはガックリと肩を落とす。 俺は別に世界を救うヒーローになりたいんじゃない。 女の子を守りたいだけ、そして、女の子から気持ちばかりのご褒美が欲しいだけだ。 そのためなら、悪魔にだって喜んでなってやる。 「っ・・・わかった・・・。ちょっとだけ・・・だからね?」 メイさんは真っ赤なりながら、顔を片手で隠すと、もう片方の手でスカートをゆっくりと静かにたくし上げていった・・・。
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