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「お弁当持ってきて正解でしたね」
レストランや屋台の行列を横目に見ながら、悠太は得意げに笑う。
「ほんと。悠太くん、ありがとうございます」
咲は手を合わせ、悠太を拝む真似をした。
悠太は、えっへん、と大袈裟に胸を張ってみせ、それから、「あそこなんてどうですか?」と視線の先を指差した。
石畳の坂道に沿って川が流れ、その脇に木組みのパーゴラが何台か据えられている。パーゴラには薔薇や藤、クレマチスなど、蔓性の植物が絡みつき、見事な装飾の役割を果たしていた。
パーゴラの下にはベンチが置かれていて、休憩を取るにはちょうど良さそうだ。
咲と悠太は藤が絡むパーゴラに移動し、ベンチへと腰を下ろした。今が時期の藤の花が垂れ下がり、ジャスミンに似た甘く優しい香りを漂わせている。
「咲さん、どうぞ」
悠太は背負っていたリュックからランチボックスを二つ取り出し、その内の一つを咲へと手渡した。
「ありがとうございます」
「寝坊してしまったので、簡単なものしか作れませんでしたけど」と悠太は紙コップにコーヒーを注ぎながら眉根を寄せた。
「ううん。すごく美味しそう」
ランチボックスの中には、サンドイッチや唐揚げ、フルーツなどが彩りよく詰められていた。さすが喫茶店の店長さんだ。
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