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午後は花音も交えて園内を回ることにした。
混雑のピークは過ぎたようで、アトラクションの列もだいぶ短くなっていた。
「あれ、乗ってみたいです」
悠太は、『エイリアンシューティング』というアトラクションを指さす。午前中も気にしていたアトラクションだが、待ち時間が一時間を超えるということで、諦めたのだった。
「今なら三十分で乗れるみたいですよ」
まるで、どこぞのテレビショッピングの決まり文句のようなことを言う。
咲と花音は顔を見合わせ笑い、悠太と連れ立って列へと連なった。
悠太は並んでいる最中も、ソワソワと忙しなく身体を動かし、アトラクションの入り口を興味深げに眺めている。
その横を、子供たちが「ナカたんっ」と叫びながら走り去っていった。
「ナカたん?」
『ナカたん』という言葉に悠太は耳ざとく反応し、列を抜け出す。
「悠太くんっ」
咲は慌てて悠太を呼び止めたが、「すぐ戻りますっ」と後ろ手に手を振り、走り去っていってしまった。
「すぐ戻るって……」
見ると、列はもう少しでアトラクションの中に入れるところまで来ていた。
「どうしましょう、花音さん?」
咲は花音を見上げる。
「いいんじゃない? 悠太くんが戻らなかったら、二人で乗ればいいんだから」と笑った。
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