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結局、悠太は戻って来なかった。仕方なく、花音と二人、アトラクションに乗り込む。
『エイリアンシューティング』は、四人乗りのライドに次々と襲いかかってくる少し可愛らしいエイリアンを、備えつけのレーザー銃で倒していくというアトラクションだった。
「咲ちゃん、後ろは僕に任せてね」と花音が曰う。クスリと笑い、「よろしくお願いします」と返したが、後ろどころかほぼ全ての敵を花音が倒してしまった。
「すごいですね、花音さん」
咲は感心する。まあね、と花音は得意げに笑った。
「だいぶ練習したからね」
「練習?」と咲が首を傾げるのに、花音はしまったと言うように口を窄めた。
「……その、ゲームで」とバツが悪そうな顔をする。
「ゲームですか。花音さんがゲームなんて意外ですね」
花音の意外な一面に咲は顔を綻ばせた。
いつも大人ぶっている花音が、ゲームなんて子供みたいなことをしているのが可笑しかった。
アトラクションの出口をくぐったところで、スマートフォンが振動する。悠太からのメッセージだった。
『僕、ナカたんに会えたので大満足です。一人で帰るので、あとは花音さんと楽しんできてください』
「……だそうです」
メッセージを読み上げ、花音を見上げる。花音は、しょうがないね、と肩をすくめた。
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