観覧車

6/9
前へ
/30ページ
次へ
「わっ、高い……」  ゴンドラは思ったよりも高度を上げていて、その高さにキュッと胃の辺りが締め付けられた。  観覧車のすぐ横に接していたジェットコースターのレールは、今やはるか眼下に見えている。園内を一望していた景色はやがてその範囲を広め、遊園地周辺へと広がる。  隣接する道路を走る車はおもちゃのように小さくなっていき、見上げるように見ていたビル群も、今は真正面に見えた。  子供の頃に乗った観覧車は、頂上の高さが、今いる高さよりも低かったように思う。そのくらいの高さなら、景色を楽しむこともできたけど、これは……。  咲はゴンドラの進行方向を見つめた。  ゴンドラは時計の九時、つまり半分くらいの高さに差しかかろうとしていた。  これで半分の高さなんて……。  咲は小さく身体を震わせた。 「咲ちゃん?」  急に黙り込んだ咲を心配し、花音が声をかける。 「……もしかして、高いのもダメだった?」 「あ、いいえ。高いのは平気なんですけど……」  ゆっくりと高度を上げるにつれ、不安定に揺れるゴンドラに、不安を覚えたのだ。  ゴンドラはユラユラとその筐体をゆるやかに揺らし、天辺を目指す。風は高さを増すごとに強まっていき、その揺れに拍車をかけていた。 「……落ちたりしませんよね」  咲は冗談めかして花音に尋ねた。少し顔が引きつっているのが、自分でもわかった。  花音は目を細め、ハァとため息をつく。それからおもむろにベンチから立ち上がった。勢いで、ゴンドラが大きく揺れる。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加