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なかやまランドは最寄り駅から徒歩で十分ほどの距離にある。今日は日曜日ということもあり、道すがら目につくのは、親子連れとカップルばかりだ。
たぶん目的地は一緒なのだろう。
「実は、昨日、あまり眠れなくて」と横に並んで歩く悠太がポリポリと頭を掻いた。
「張り切り過ぎちゃって?」
咲は冗談めかす。それに、そうなんです、と悠太はうなずいた。
「興奮しすぎて、全然眠れなくて。……お陰で寝坊してしまいました」と笑う。
「大丈夫? 寝不足じゃない?」
咲は悠太の顔色を窺う。大丈夫です、と答える悠太の表情はハツラツとしていた。
「咲さんは、なかやまランドに行ったことありますか?」
悠太の問いに、そうね、と咲は記憶を呼び起こす。
「幼い頃に両親に連れられて、何度か。でも、最後に行ったのは十五年も前だから、もう随分様変わりしてるかも」
そうかもしれませんね、と悠太はうなずいた。悠太は咲と会話している間も落ち着きなく、辺りを見渡している。
「いいですね、ああいう親子」
すぐ前を歩く、子供が両手を両親と繋いでブランコをしている光景に、目を細める。
「僕、親がいないんで、ああいうのに憧れるんですよ」と笑った。
「え? そうなの?」
突然のカミングアウトに、咲は驚いて、思わず立ち止まる。
「はい。幼い頃に母が亡くなったので」
つられて悠太も歩みを止め、咲を振り返った。
「……それで、父も、頼れる親戚もいなかったので、擁護施設に預けられたんです」
そうなの、と咲はつぶやいた。
それ以上はどう返していいのかわからなかった。
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