湖畔の家

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「ここは一体なんなんだ?」 「家だよ」 「君達の住まいだというのはわかる。だが、それ以外に何かの役割があるんじゃないか」 「君達ってことは、俺以外の奴にも会ったの?」 「会っていないが、ある手記を読みそこから察した。君以外にもここに住む者がいることは」 「んー、なるほど。まあ別に他の役割なんてない。ここは俺たちが住み、俺たちが成長する為の場所だよ」 その【成長】という言葉に強く引っかかりを感じるが… 「昔はここに沢山住んでたんだけどね、全員逃げたか死んだかで、多分今は数人しかいない」 「君達の親は、楠木誠吾というのか」 「知らねえ」 「え?」 「名前は知らない。父さんって呼んでたから」 ……そんなことがあるのか? どこが分け隔てなく愛を注いだだ…歪みすぎている ベクトルが全て自分へと回帰した愛ーー 人間として接していたのかすら疑問だ 「まあ色々考えてんだろうけど俺が話すまで質問は待ちなよ」 俯きながら考える私の方を見て、結はそう言った 「……わかった」 「今この家に住んでんのはおそらく俺と5人の兄弟を除いてほぼいない。以前は俺たち一人ひとりに育て役と教え役が数十人ずついたんだ。 俺たちはそいつらと一緒にここに住んでた。結構楽しかったよ。色々教えてくれたし、とくに不満は無かった」 ーーこんな閉鎖的空間にいてもなんの疑問も持たなかったのか…外部との通信手段があるなら外の世界の存在を知ることは十分あり得たはずだ 「だけどある日父さんが死んだみたいで 生活が一変したんだよ。 俺たちは多分いらなくなったんだろうねえ… 兄弟達で殺し合いをしろって言われたんだ」 「…殺し合い?」 「そう、そんで生き残った奴だけが外に出られる。その上欲しいものが与えられるって話」 「……だが、実際まだ1人も死んでいないんだろう?」 「うん。別にみんなここから出たいわけじゃはいし、欲しいものなんかないんだよ。だから俺たちはここでそれぞれ暮らしていた。 そしたら今度は俺たちを始末しようといろんな人間がここに降りてきたんだ」 「その人達を、全て君達が……」 「そう。返り討ちにしたってわけね。雑魚ばっかりだから面白くもなんともなかったよ」 「…君達は強いのか」 「強さはわかんねえけど 俺たちみんな、殺すのは得意なんだよね」 「…何を学んでいたんだ、ここで」 「別に人の殺し方なんて教わってないよ。ただ、ここに来た奴らよりは色々優ってる気はするけどね」
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