湖畔の家

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となるとやはり……彼らはーーー 「インプットというのは…」 「行動の制限。なんでかわからないけど、出来ないことがあるんだよね。脳みそにセーブがかかるって感じかな?まあわかんねえかこんな話」 「いや…ヒトの脳は神秘の世界だ。ある程度の 理解は示せる」 「あもーさんは頭良い人なんだね。俺あもーさんみたいな人好きだよ」 「てなわけで外に出るのは諦めて、あもーさんもここで一緒に暮らそうよ。結構楽しいよ」 「ありがたい申し出だが、流石にそれは遠慮したいね」 「じゃあどうすんの?多分他に出る方法ないと思うけどな。俺らに殺し合いさせる気?あっ!そういや茶出すって約束だったね。ごめんごめん。ちょい待ってて」 「いや、別に良いんだが…」 私がそう言う前に結はスタスタと冷蔵庫の方へ行ってしまった。 ーーー戸賀という男が私をここへ来させた男だとして、相当に私を理解しているがわかる。 そして今、私はその者の思い描く筋書きのままに進んでいるのだろう 何故この場所に、この状況に、この環境に私を導いたのか 知っているのだ。私ならばこの状況を打破できることを つまり私はーーこの滞った状況の潤滑剤としてここに送り込まれたのだ。自発的に、自分の意思で足を運んだなどとは口が裂けても言えない 「お待たせ!」 思索する私の前に、お盆にグラスを乗せた結がやってきた 「ああ…ありがとう」 結はグラスに入ったお茶を私に差し出す 正直喉はとても渇いている。 ひんやりしたグラスが更に喉を鳴らさせる だが…少し警戒してしまう… もし彼の殺しの流儀が《毒殺》だとするなら…今このタイミングこそ最もスムーズに私を殺せるのではないか? 「安心しなって。大丈夫だから。俺のポリシーはコレだから」 そう言いながら結は背から刃渡り30センチ程のナイフを抜き出した 「《刺殺》というわけか、なるほど」 「他の奴らは趣味が悪いよ。血が滴るその瞬間こそが、命の火が燃える瞬間だとわかんないかなあ」 …わからん 「てなわけで、毒なんて入れてない」 ナイフを赤いレザーのシースに収め、結は笑った 「そもそも全ては君の話を信用した前提なんだがな」 だが、不思議と警戒心は解れ、私はグラスに入ったお茶を飲み干した ほんの少しの時間言葉を交わしただけでわかる 結はとても聡い 表情一つ見ただけでこちらの意図を汲み答えを出す。 そんな彼が私を自分が寝食するこの場で始末するとは考えにくい。 それに、武力に於いても彼が本気を出せば私など今すぐにでも殺されるだろう つまり このお茶を飲もうが飲むまいが、死ぬ時は死ぬということだ なら少しでも喉の渇きを癒す方が賢いだろう。 私は開き直ってグラスのお茶を勢いよく飲み干した 「ありがとう。美味い」 ただの麦茶だが、本当に美味い。真夏の働いた後のビールより美味いかもしれない それほど私の喉は渇いていたということだ。 「良かった。で、どうするの?」
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