湖畔の家

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「他の者にも会いに行く。それからじっくり考えたい」 まずは知ることだ。ここのルールと全容を。でなければ活路を見出すことも出来ない 「この隣のエリアにも兄弟がいるんだろう?もし良ければ、橋渡ししてくれないか?」 「えー?」 結は難色を示した顔をしながらも、少し笑っているようにも見えた 「変わってんなあもーさんは。まあいいよ、面白そうだからついてったげるよ!その代わり死んでも知らないよ」 「え?」 「俺みたいに優しくないからね。他の奴らは」 「…そ、そうか」 だがーー優しくないという点ではこちらも同じだ ここから出る為に、誰かを傷付ける事を要するならば私はそれを厭わない それを望んで私をここに招いたというならば、乗ってやろう 「で、どちらから行けば良い?時計回りか、反時計回りか」 「北はヤバいから南から行こう。北にいるやつニガテだし」 「…危険なのか」 「うーん。なんつーかなあ…危険といえば危険か。南の方はまあ馬鹿だから大丈夫だよ」 頭を掻きながら結がそんな言葉を口から溢した 「趣味もわりいしね。あ、でも危険なのは変わりないから」 スッと立ち上がり、グラスを手に取りながら結は続けた 「ご馳走様でした」 恐らくは殺し方のことなのだろうが、殺人に趣味の良し悪しを説かれてもな… 「んじゃ、れっつごー!」 結に付いていきながら部屋から出た後、初めに来た地点へと戻り、そこからさらに南下して行き次の区間へと渡る扉の方へと私達は辿り着いた 遠くからではよくわからなかったが、近くで見ると区画を仕切る扉はかなりの大きさで、重みもありそうだった 扉にはセンサーのようなものがあり、認証されなければ開くことは出来ないのだろう 「指紋認証か」 「残念。はずれ」 そう言うと結はセンサーの横にある小さな窪みに指をかけて下へと下ろした すると窪みの部分がスライドし、正方形の空洞が現れた 空洞には針のようなものが突き立っており、結はそこに指を刺した 「…まさか、血液?」 「そ。俺らの血でしか開かないよこれは」 「衛生的にはあまり良くなさそうだな」 「大丈夫。このスライドが閉まったら自動滅菌するから」 「……ハイテクだな」 どこに財力を注ぎ込んでいるんだここの家主は 鈍く低い音を立てながら、扉が開く 「こっからは気をつけた方がいいからね。あっというまに仏様になっちゃうから」 「はは、冗談に聞こえないな」 「わかってるくせにい。 死なないでねーーーつまんないから」 冷ややかな視線に優しい口調で言い放つ結に思わず背筋が凍った 「…善処しよう」 先程摂取した水分が、もう額から滲み出している 早くも喉が渇いたが、暫くは水すら飲めなさそうだ。 飲み物が入った鞄を車に置いてきたのは失敗だったな… そんな些細な後悔を脳内で唱えながら 私は、この湖畔の泥濘の中に、更に深く沈んでゆくーー
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