持たざる者

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持たざる者

ーーーー 中に入った途端、明らかに匂いが違っていた 錆びたような異臭…ところどころ斑点のようについた黒い模様は人間の血を容易に想像させた 「うおっ!」 叫び声を上げ、思わず私は後ろに飛び退いた 「ハハハ、面白いでしょ」 後ろで結が笑っているが、私は全く笑えなかった 何故なら、図上から巨大な鉄の板が落ちてきたからだ よくよく見るとそれは板でなく、かなりの厚みがある鉄の塊だった 「おいおい…殺意が高いな」 「ね?趣味悪いでしょ」 「…確かにな」 こんなものに挟まれたら、間違いなく圧死するだろう それも人間のカタチを原型も止めず、ヒトと識別するのも難しい程に 「《圧殺》が趣味というわけか」 「気をつけないとまだまだトラップがあるよ」 「…ああ」 鉄の塊は爪先の少し先にあった 僅かに上から「ゴン」という何かが外れる音がしたので気がつけたが もしその音に気が付かなければと思うと、嫌な汗が止まらない 「おい!結!誰だそいつ!新しい仲間かよ!」 「久しぶりだねえツナギ」 結の視線の方に私も視線を移すと 少しこちらより高い位置から声を発する人物が見える その少年は結と正反対の色の青い髪を逆立て、眉に二連のピアスをつけ、それが耳と繋がっている 一見するとヴィジュアル系バンドにいるような風貌をしていた 「ビビって一生会いに来ねえと思ったぜ。1人じゃ怖いが2人なら平気ってか?だせえなあオイ」 「良かったよ変わりなさそうで。俺がどれだけ頭が悪くても世界で二番目ってだけで安心するもんね」 「どういう意味だあオラ…」 「さすが世界一だよ」 ……この二人、仲悪いのか それも極悪だな… 橋渡しどころじゃない。仲間と認識されたら私も殺されるんじゃないか? 「あもーさん。あれが俺達兄弟の中で一番のバカの【繋(ツナギ)】だよ」 「殺されてえみてえだなマジで…」 【繋(ツナギ)】と呼ばれた少年は、青筋を立てて目を血走らせている 初見で危険な人物だと容易に判断できた 「お仲間もろとも消してやるぜ」 「ま、待ってくれ。私の名前は天羽という!君と話がしたい!」 いきなり計画が瓦解した…獣と対峙しているのか私は… 「勝手に喋ってんじゃねえぞクソが…」 ーー確かに…… 「君の言う通りかもしれないな」 「ね?だから言ったでしょ。あいつ脳みそないよ多分」 「「カンッ」」 「!?」 鉄同士がぶつかり合う音と同時に、私の眼前に何かが飛び込んできた それが先程まで高台にいた少年だということに気が付くにはあまりに遅く 繋の脚は私の顔目掛けて飛んできた 「「ギィン!!」」 今度は鉄が擦り合う甲高い音と共に   私の前に結が立ち、蹴りを防いでいた 「勝手な事すんなよバカ。お前みたいなバカにはあもーさんは殺させないから。まだ楽しませてもらわなきゃなんないからねえ」 「てめえもどうせやってやるから安心しろやコラ…」 「お前には無理、何故なら バカだから」 「オラアアア!!」 怒髪天を衝くとはまさにこのことか 「守れんなら守ってみろやカス!」 「お前の声を近くで聞く俺の耳が可哀想だよ」 …いきなりこれか。骨が折れそうだーーー
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