持たざる者

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どうやら今は結の力に頼らせてもらってもよさそうだが とはいえ、この状況を黙って傍観しているのはよろしくない この部屋の異常な殺意。繋が私を殺さずとも、この部屋に殺される可能性がある それに、結がいつまで私の味方をしてくれるかもわからない。 彼にとっては私は、久々に与えられた玩具に過ぎないのだから 飽きたら捨てられる、その程度の存在だ ならば私がとるべき選択はーーー 「どうしたあ!動きがおせえんじゃねえかあ!?」 「お前程度こんくらいで十分でしょ」 「ちょっといいかな」 「ああ!?」 繋が履いている分厚い鉄下駄と、結のナイフがぶつかり合う中 私は両者の間に割って入った 「殺すぞジジイ。邪魔すんなよ」 「どしたのあもーさん」 私はまだ38だ。ジジイではない そう言いたくなる気持ちをグッと堪え、私は続ける 「こんな無意味な戦いはやめないかな」 「はぁ??」 「ハハ、無意味って!あもーさんからしたら願ってもない展開なんじゃないの?」 「いや、確かに私はここから出たいが、君達に争って欲しいわけじゃない」 「…じゃあどうすんのよ?」 結は不思議そうな顔で私を見ている 「実は私には、ここを君達兄弟全員と共に出る策がある」 「おい結。こいつ頭大丈夫か?」 「ちょっとヤバいかも」 酷い言われようだな… 「嘘じゃない。先程結にも話したが、私はここに入ってくる前に一冊の手記を読んだ。その手記によってこの地下室の存在を知り入ることが出来たんだ。 その手記に、ある手がかりがあってね 結の話とも照らし合わせて考えると、やはりそうなんじゃないかと思った」 「もったいぶらずに早く言えや」 「それぞれの腹の中にあるという《鍵》と呼ばれる物、その《鍵》にはスペアが存在するのではないか」 「おい結。コイツ殺すぞ。気に入らねえ」 「うーん。ちょっとおかしくなったのかな」 「まあ待ってくれ… もしスペアが存在するのなら、結が言っていた正規のやり方というのは、恐らく兄弟全員が持つ全ての鍵を使い出ること。この条件はクリア出来ているということになる」 「スペアがあればの前提の話だろうが。あるわけねえんだよんなもん」 「いや、ある」 根拠はないが…可能性は多いにある 今はその可能性に賭けるーー 私の強い意志のこもった眼差しに、二人は少しだけ信じる心を持ってくれたようだった 「どこにあるの」 「…それは今はわからない。だが心当たりはある」 「流石に信じ難いなあ」 「ああ。だろうな…だからこうしよう。兄弟全員が揃うまでに私はその在処を探す。揃った時に一つでもスペアを見つけられていなかったら、私を殺したらいい」 「なるほどね」 「ほーん」 「だが一つでもスペアが見つかったとしたら…全員でここを出る協力をして欲しい。全員で他のスペアを探すんだ」 「そうかあ。そういうことなら協力してやってもいいな」 頭を掻きながら、繋は私の方に歩み寄って来た 「ああ、ありがとう」 私がそう言った瞬間 鈍い音と同時に、目の前に閃光が走ったーー 頭に迸る激痛 蹴られたのか…私は 「ガ…は…」 視界が赤みがかっている どうやら繋の分厚い鉄下駄が私の額に直撃したらしい 「アホかジジイ。だれが協力するかよ」
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