持たざる者

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「少し見て回っていいかな?」 「ああ。適当に見てろ」 そう言うと繋はテーブルのある居間の床に座り込んだ 「おい冷蔵庫全然甘いもんないじゃん」 「勝手に開けんなボケ!」 結はうろうろと動き回り好き放題やっている さて、見るべき場所は… まずはやはり… 私は机の上に置かれた繋のパソコンを見つけ、電源ボタンを押した 電源のライトは点くが、モニターはやはり真っ暗なままだった もしかしたら、結と違い繋なら協力してくれるかも知れない… 「繋。お願いがあるんだが」 私は居間に座り込んでいる繋を呼んだ 「あ?」 「あもーさん、それは反則だよ」 ひょっこりと現れた結が私にそう釘を刺した 「ネット環境は使わない。それなら外部と接触出来ないだろう。ただこのパソコンの中に手掛かりがある可能性が高いんだ」 私のその言葉に、結は納得いったのかいってないのかよくわからない表情を浮かべながら黙ってその場に座った 「まあ、分かってるよね。あもーさんなら」 妙な真似をすれば斬ると言わんばかりに、結は膝の上に自らのナイフを置く 「…ああ」 「俺を置いて話を進めんなてめえら」 繋はパソコンのある部屋へとやってきてそう呟いた 「すまない。頼みがあるんだが、このパソコンを少し調べさせてほしい。今結に話したとおり、外部と通信したりなどは一切しない。ただ中のデータを見るだけだ」 「…だりいな」 そう言いつつ、繋はパソコンの電源ボタンを押した 「無駄だと思うけどなあ」 モニターが点き、デスクトップにはいくつかのアイコンが表示されている フォルダやアプリケーションソフトが何点かある中で 私は一つ、気になるアイコンを見つけた 「これは?」 「ああ。月に一度、父さんに起こった出来事とかを報告しねえといけねえんだよ」 「まあそれも父さんが亡くなるまでだったけどね」 そのフォルダには【経過報告】と記されていた 日記のようなものか?何故そんな事をさせる必要があったのか… 「他には何を報告していたんだ?」 「まあバイタルと、テストの結果かな。たまにテストがあったんだよね。勉強をちゃんとしてるかのチェックだろね」 ーーただ彼等の私生活を知る為ではない…絶対他に意図があった筈だ 「報告しないとどうなるんだ?」 「減点される」 「…減点?」 「そう。3回減点になると、それぞれの母親に罰が下る。内容はわからないけど食らった母親を見たことがある」 「ありゃ悲惨だったな」 「…どうなったんだ」 「とにかく酷い姿だったよ。自分の母親じゃなくてよかったって感じ」 幾つもの疑問が同時に浮かび上がってくる… しかし現状、その疑問を解決したところで状況は変わらないので口には出さなかった 「やはり君達は自分の母が傷付くのは見たくないんだな」 「…当たり前だろうが」 となると、彼等の中にもまだ僅かながら良心は残っているのかもしれない… ただの殺人鬼ではないということなのかも…ーーー
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