穏やかな朝 天羽家

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楠木誠吾ーーーー 政財界を牛耳る大物資産家だということはネットで調べればすぐに上がってくる。 しかし、ネットではまことしやかに囁かれている 彼には裏の顔があるのではないかとーーー 黒い繋がり…それこそ反社会的勢力や、海外のマフィア なんでもやる子飼いの企業に汚れた金を洗わせていたり、ライバルを軒並み陥れさせたり… まあ…噂の域を出ない話だ。恐らく根拠も出ない しかし、その名前は私の足を更に前に進めるには十分すぎる材料だった。 私も少しミーハー的な気質があるのかもしれない 書類に目を通し、載っていた住所を見てみると、随分都内からは離れた場所だった。 車で5、6時間くらいか…定時で終わってから行ったら確実に午前様だな… 今日は諦めて、明後日の休みの日に行くことにしよう ーーーそれにしても… またデスクに戻ると、椅子に座り煙草を咥えながら私は思索に耽った 有り余るほどの財を持ち、別邸を建てることはなんら珍しい話ではない。どこにでもある。ありふれた話だ なのに何故だろうか。どこか違和感が拭い切れない 「難儀なもんだ。いつもながら…」 呆れているのは、自分に、だ。 年甲斐もなく、何かありそうなこの物件に、こんなにも胸を躍らせてしまっているのだから 「悪い癖だな。相変わらず…」 何度も何度も、私は選択を誤り続けてきたーー またいつものように 食卓に並ぶ料理を平らげるように ーーーその毒を口に運んでしまうのだ。
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