穏やかな朝 天羽家

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ーーーー 「というわけで、明後日ちょっと出掛けてくるから」 「休日なのに仕事?」 帰宅して夕食を摂りながら、私は実咲にそう告げた。 「えー!明後日買い物行くつもりだったのに!」 前から授が怪訝な顔でこちらを睨んで声を上げた 「そんな予定立ててた?」 「立ててた!私が!」 「脳内で勝手に予定を立てるな。ていうか月曜日だが」 「学校昼までだったからそのあと行くつもりだったの!色々欲しい服とかあったのに!」 「母さんに連れて行ってもらえばいいだろう」 「もう!お母さん、二人で行こ!」 「…いいけど、あんまり多くは駄目だからね」 「うぐ…」 しっかりと眼光で釘を刺すあたり、やはり反抗期といえど授は母には逆らえないだろうな… しかしこの気の強さは母譲りか 「姉ちゃんばっかりずるいな。俺だって新しいスパイクとか欲しいのに」 授の隣で与が不満を漏らす 「私だってそんなには買ってないし!」 「前も母さんと買い物行ってたろ!」 「あの時は服買ってないから!」 「わかったから静かに食べなさい!与はまた次に買い物連れてってあげるから!」 「いや俺は友達と行くからお金だけちょうだい」 「…そういう年頃になったのね」 与もついに思春期を迎えたか…。なんだか感慨深いな… 「でも、どこ行くの?」 子供達を差し置いて、実咲は私に尋ねた 「ああ…ちょっと遠出になるんだが、山形県まで」 「「山形!!?」」 家族全員が大きな声でそう叫んだ 「…ちょっとわけありな物件なんだ」 「ずる!私だって行きたいよ!ちょっとした旅行じゃん!」 「…仕事だって」 「でも美味しいもの食べて帰ってくるんでしょ!」 「そんな時間があるかも分からないよ。次の日も仕事だし」 「いいなあ私もついていこうかなあ」 「授、あんまりお父さんを困らせないの」 「むー…お土産買ってきてよね!」 「…わかったわかった」 羨ましがり不満を垂れる娘とは裏腹に 実咲は私の横顔をジッと見てきているのがわかった やはり、女性の勘とは素晴らしいものがある 第六感的な何かが働くのか、実咲は特に人より敏感だ
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