穏やかな朝 天羽家

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ーーーー 2020年 4月6日   またいつもと変わらぬ朝を迎えた 鏡の前での娘との小競り合い 慌ただしく朝食を掻き込む息子 身支度を促す母親 台所から漂ってくる味噌汁の香り カーテン越しに差し込む爽やかな陽射し 変わらぬ朝。穏やかな朝 別に何かが変わるわけでもないのに… 何故か私はこの日々が、異常に愛おしいものに感じているーー 子供達の顔を見ながら、実咲の作るご飯を噛み締めている 「多分遅くなるから、先に寝ててくれ」 「わかった」 お腹を満たし、身支度を整え、私は玄関で靴を履きながら気合いを入れた 「お土産忘れないでよ!行ってきます!」 「行ってきまーす」 「行ってらっしゃい」 学校に行く子供達を見届け、私も家を出る 「気を付けてね。何かあったらすぐに連絡してよ」 「ああ。まあ何もないと思うが」 「だといいけど。じゃあ、行ってらっしゃい」       「行ってきます」 そうして ーーーこの言葉を最後に 私のーー  長い    永い物語が 幕を開くことになるーーーー
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