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プロローグ
14歳の誕生日。僕、多岐内春陽はこれからの人生に関わってくる第二性バース検査を受けてアルファ(α)だと認定された。
両親はアルファの父とオメガの父だ。二人は学園で出会って“運命の番”になって僕を産んだ。だから低確率にしてもオメガもありうるはずだった。
「アルファ…かぁ」
この判定には喜ぶべきなのに、僕の唇は力なくボソッと呟いていた。その声が吐息に聞こえたのか、同じく第二性の判定を先に告知された幼馴染の蒼が顔を近づけてきて覗き込んできた。唐突にそういう事をするから心臓がキュッてなる。
「ハルもアルファだったね、当然だな」
「当然って、ベータか…オメガだってありうる確率だったんだよ?」
「いーや、ハルはアルファだって確信してたよ。俺はね」
蒼は嬉しそうだ。それはそうかもしれない。
人口比ではアルファもオメガも同じくらい希少だというけれど、アルファの社会的地位はエリート層に確立されていて何に対しても権力者側なんだ。
それに、“運命の番”を得られるのもアルファだから。
蒼がアルファだと知ったとき、僕はアルファでもベータでもなく“オメガ”だったらと願っていた。
僕の心の奥底で温めていた蒼に対する恋心の陽炎は、これで消える。
アルファ同士では、蒼と運命の番にも将来の伴侶にもなれないんだってこの日、宣告されたからーー。
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