プロローグ

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 ーー中学最後の冬、僕は一大決心して蒼に告げた。  「周防学園の高等部進学をしないだって? ハル、本気で言ってるの?」 「うん、僕は地元に残ろうと思って」 「受験票はとっくに送られてきてる…いや、そういう問題じゃない。周防学園の高等部はアルファにとってどういう教育機関か知ってるだろう?これからなのに、何故、今更地元なんだ?」 「なんていうか、んと、母さんの体調も悪いし」 「大手術を行ったんだから気に留めてしまうのはわかるんだ……しかし国立病院の医師らが専属についているよね」 「えっと、地元から離れるので実は寮生活に不安が……!」  蒼は目を細めながら怪訝に見ている。もう…わざとらしいド下手な嘘はつけない。 「ごめん。本音を言うとね、アルファだからって僕は蒼のように成績が優秀でもないし、中等部で周防グループ系は精一杯だったからなんだ。今までの事を思うと蒼にも悪いと思ってる。それでもよく考えた結果だから……」  地元にある周防学園系列の中等部までは蒼と一緒だった。呑み込みが悪いわけじゃないけど成績は蒼とは雲泥の差。蒼は僕の為にと放課後は時間を割いて勉強を教えてくれたけど、寄り添ってくれる蒼の仕草や視線が気になってもっと成績を悪くしてしまった。  シュンと項垂れて情けない言い訳を交わしてる僕を、冷ややかな視線を向けられていると思うと辛い。  諦めようと思った恋心は簡単には無理で、辛さは倍になって既にココロは悲鳴をあげて逃げることを選んだ。  少しの間の沈黙のあと、蒼は「わかった」と言って、「幼馴染だからって固執し過ぎか……そうだね、これからは別々で頑張ろうな」と笑顔を見せてくれた。  物わかりの良い蒼の返事にズキッと胸が痛んだ。 ( 本当は蒼と離れたくなんかないんだよ )  全て僕が悪いのに、勝手に好きになって、勝手に絶望して。  この時を期に、幼馴染の縁までギクシャクするようなシコリが残された。
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