1. 晴天のへきれき

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多岐(たき)!」  地元高校の友人である大和くんが、大講堂の出入り口で僕を見つけて手を振ってくれている。  大和くんに駆け寄ってお互いグータッチをした。その光景を学園生は不思議そうに見ていたけど気にしない。  大和くんの第二性はベータだ。地元の高校に入学した時から飾らないその面白い性格に気が合って、二人の間には第二性のことなんて関係もなく仲良くしてる。 「長ーい生徒総会だったな~だりぃわ」 「寝てた?」 「んなこと!書記の天音(あまね)ちゃんだけは見逃さないために落ちる瞼を頑張って目を瞠ってたよ。この学園の癒しの天使だからねぇ天音ちゃん」 「うん、天音ちゃんは大きな瞳に星がキラキラして可愛いよね」  一番人気のある生徒会長は近寄りがたい感じの美形だけど、書記の天音ちゃんは可愛い男子でファンも大和くんのような茶系短髪スポーツ系の人に騒がられてる。ただ、大和くんの可愛いは仔犬や子猫と同じ可愛いだ。 「多岐も会があるごとにいっつもこーんなに目を見開いて見入ってるよな? 生徒会に誰かお気に入りでもいんの?」  細い目を指で無理矢理に大きく開いて僕に似せようとしてるよりも、ドキッとする発言に焦った。 「え、なんで!?」 「オレの席から見えるもん。うるちゃ型のベータ生徒らに囲まれてあわあわご愁傷様だけど~」 「別にそんなっ……」  ざわざわとゆっくり歩いていた廊下の後方から生徒たち数人の声が聞こえてきた。  大講堂前に群れている生徒たちで溢れかえってるのを、風紀委員会の役員が取り締まってる。 「お。生徒会役員やその他の役員も出て来るのか?」  大和くんが足を止めて体ごと振り向く。生徒会に反応する大和くんは、まだ学園に来て1か月しか経っていないのに既に学園色に感化されていると思う。 「こんなところに居たら風紀の人に取り締られるから、行こう?」  促しても大和くんはこの場から離れない。僕も口は動いても足が動かないでいる。    ファンの生徒たちが、生徒会役員に少しでも近づきたくて壁のように群がっているけど、屈強であるはずの風紀役員でもその壁は剥がせないようで、さき程の大名行列以上に連なってこっち側に向かって近づいて来る。  僕たちは廊下の壁にピタっと張り付いてその場を凌ぐしかない。  心もとないから大和くんの背後に引っついてーー。
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