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二郎君の愛車はホンダのドリーム125。通称タイカブと呼ばれるこのバイクは簡単に言ってしまえば“海外版カブ”である。後方に長いシートが特徴的で、このシートに数人が乗って危なっかしく走る海外の映像を見ることもしばしば。とは言え俺もタイカブについてはそこまで詳しくない。二郎君がどこでどうやってそれを手に入れたのか、何故タイカブを選んだのかはよくわからない。プレスカブに比べてやや角ばった印象の黒い車体をしげしげと眺めロングシートを撫でてみる。二郎君のタイカブはこのシートの後ろにリアボックスを取り付けている。前に見た時にはこんなキャリア付いていなかった。いつの間に。スピードメーターは最高時速160kmまでは表示できるようだが、そんなスピードまで出せるのだろうか。
「お待たせしました」
二郎君がオレンジ色のツナギ姿で会社から出て来た。目立つ。顔が良いから余計に目立つ。彼はアライの白いヘルメットを被るとグローブを嵌めてタイカブのキックペダルを踏んだ。俺も赤いヘルメットを被り軍手をする。一度シールドを上げて二郎君の背中に声を掛けた。
「どこに行くんですか」
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