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「松島」と二郎君が答えた。俺がシールドを戻して彼の肩に手を置くとタイカブが走り出した。この町から松島町までは距離にして30kmほど。タイカブでのんびり走っても1時間かからない。海は好きだ。泉ヶ岳の麓で暮らしていた俺にとって海のある町は憧れの場所だった。本当は二郎君にいろいろ聞いてみたい。横須賀の海のことを。二郎君の故郷の海はどんな姿をしていたのかを。
坂の上の駐車場にタイカブを駐めて、そこから先は歩いて行くことにした。二郎君は歩くのが好きな方だと思う。2kmぐらいの距離なら何ということもなく歩いて行く。都会人って感じ。田舎者は車が必須の生活をしているが故、近所へ行くのにも車を使いがちだ。松島海岸駅まで来ると見える風景に観光地らしさが出てくる。遊覧船が浮かぶ海には遠くまで小さな島々が点在している。陸に目を向ければ飲食店や土産物屋が建ち並び平日の真ん中にも関わらず大勢の観光客が行き交う。飲食店が混む前に昼食を済ませてしまおうと、早々と店に入った。
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